第291話 帰宅
母屋へ戻る車の中で、俺はイヤと言うほど桃代に怒られた。
無茶や無理をした訳ではない、ちょっと変な小動物と会話をしただけなのに、なんでそんなに怒るんだ?
だって、仕方がないだろう、にゃおにゃお言いながらネコと会話をしたんじゃない。人間の言葉でカワウソと会話をしたんだから・・・・おかしいのは俺ではなく、あのカワウソの方なんだから・・・。
なんて言い返したところで、桃代には通用しない。
【取り憑くかも知れない物の怪に、無警戒で近付くからでしょう!】まずは、そんな言葉で牽制をされて、【紋ちゃんは何も危機感を持ってない!】そんな感じで激怒され、火に油を注ぐのが目に見えているから言い返さない。
まあ、気持ちはわかる。
今回、実際に
反論する事なく素直に謝る俺に、桃代はクールダウンをすると、
「ねぇ、あのカワウソなんだけど、苺とキーコにはどう見えた? 危険な何かを感じられた?」
「いえ、わたくしには何も感じられませんでした。まあ、龍神さんが
「そうですね、あたしも苺さんと同じです。あのカワウソからは悪意を感じ取れませんでした。多分、あの子は一匹だけで寂しかったんだと思いますよ」
「そう、苺とキーコがそう言うのなら問題は無さそうね、良かったわ。まぁ、母屋に着いたら、あの子が何者なのか直接聞いてみましょう。ごめんね紋ちゃん、ちょっと言い方がキツかったよね」
「いいよ、俺がボケてたのが原因なんだから。それよりも、アイツは何者なんだろう? どうして、あの場所に居たんだろう?」
「あの場所って? 紋ちゃんは池って言ってたけど、どうして絶滅したと思われてるカワウソが、池に居るのかな?」
「池って言っても、ほらアレだ。昔は河の淵だったけど、洪水か何かで流れが変わって、残された淵が池になった感じだったぜ」
「それよりも紋次郎さん。カワウソが言葉を発した時点で、おかしいと思わなかったのですか? 龍神さんが
「わかってる。でも、仕方がないだろう、人ではない龍神と
「どちらにしても、母屋に帰って情報を整理しましょう。祟りの原因かも知れない、
バカだから考えなくても良い。そういう事ではなく、安全運転の為に
俺は安全運転の為に、時折ルームミラーに目をやり後ろの確認をするが、後部座席に座る苺には、見た感じ変化は見られない。
まあ、苺本人やキーコにも分からないようだから、見た目で俺に判断が出来る
苺の事は母屋に戻った時に龍神に聞くしかないな。
事故やトラブルに遭うことなく無事に母屋に到着すると、
さて、ユリと桜子に絡まれると鬱陶しいのでコイツ等は桃代に任せ、荷物を降ろす苺とキーコの手伝いをしてやる。
案の定、ユリと桜子は桃代を見つけると不満をぶつけ始めた。
「もう、わたしと桜子さんを残して、
「ごめんねユリ、それから桜子も。だけど、わたしが不在でも、支障が出ないように昨日の内に段取りをしてたでしょう」
「そうですけど、いきなり居なくなるのは困ります。仕事中なんですから、
「は~い、すみませんでした。これからは
「だから、行方不明にならないでくださいよ。ただでさえ、この時期には珍しい台風の
「ユリさん、もうやめましょう。それよりも桃代姉さん、あまちゃんさんがお見えです。母屋の居間の方にいらっしゃいますので、対応をお願いします」
「えっ、てんちゃんが来てるの? ごめん、ちょっと行ってくるね。荷物を運び終えたら、紋ちゃんも挨拶に来なさい」
ぐッ、
無視することは出来ないし、早めに挨拶をしてずらかるしかない。
面倒なので考えないようにしていたが、桃代とあまちゃんって、どういう関係なんだろう?
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