第236話 泳ぎ
みんなのところに戻ると、キーコは俺に駆け寄り、水着姿の感想を聞いてくる。
俺が似合うと誉めてやると、満面の笑みを見せていた。
さっきまで泣いてた癖に、おまえは意外と
まあ、これからは、【強く自分勝手に生きろ】そう言ったのは俺だから、その通りにしてるだけなのかも知れない。もしもそうなら安心だ。
濡れた服を着替える為に、俺はキーコから離れると、二つあるテントの奥の方に連れて行かれ、ここで着替えるように桃代に案内をされた。
入り口を完全に遮断して着替えるが、案の定というか当然というか、桃代も水着に着替え始め、自分の着替えが終わると、俺はその手伝いをさせられる。
ひとりで着替えられるのに、どうして俺に手伝いをさせる? 桜子に頼めばいいだろう。
桃代は
まあ、それは仕方がない。
ポロリとハミ出て桃代が恥をかくのは、俺もイヤだからな。
ただ、腰の辺りにあるモモマークは、今日のこの場には、
ちなみに俺も海パンだ。
頼んだ訳ではないが、わざわざ桃代が持って来て、お礼を強要された。
着替えが終わると、たいして腹の空いてない俺は、キーコの母ちゃんに呼んでもらう為に、少し離れた砂浜で座禅を組んで
しかし、意識して無意識に行動するのは難しく、そのうち腹を満たした桃代が筆頭の、遊び部隊が俺の邪魔を始めた。
今回、遺骨を探すと言い出したのは俺だ。
だから、責任を果たす為に真面目にしている、それなのにどうして俺の邪魔をする。
文句を言っても仕方がないので、俺は無視して迷走、ではなく瞑想を続けるが、後ろから桃代に抱き付かれ、座禅を組んだ足の上にキーコが座り、身動きがとれなくなった。
「二人とも、どういうつもりだ? どうして俺の邪魔をする?」
「もう、紋ちゃんは、まだわかってない。鬼は人間に殺されたの、キーコが居るからって、簡単に人を信用して呼ぶわけないでしょう。それは、心から楽しんでいるキーコの姿を見てからよ」
「うっ、確かに桃代さんの言う通りですね。キーコも今の話を聞いたのか?」
「うん、砂の祭壇を作った後で桃代様に呼ばれて、これからの方針を聞いたよ。あたしもその通りだって、思ったもん」
「そうですか、じゃあキーコは楽しまないとな。ちなみに桃代さん、ここで楽しむのはいいけれどトイレはどうするの? オイラ、穴を掘ってやるのはイヤですぜ」
「いきなり現実的な事を言うわね。でも大丈夫よ。ほら、そこの砂浜にバルボッサの船が
「桃代さん、あれは
「大丈夫でしょう、龍神様が引っぱってくれるから。ほら、
「よし、じゃあ、海に入って楽しむか。ちなみにキーコは泳げるのか?」
「えへへ、あたしは泳ぐの得意だよ。モンちゃんは泳げるの?」
「当たり前だろう。ガキの頃に、桃代が教えてくれたからな・・・だけど、深い場所には行かない」
「あ~~聞いたよ。昨日、モンちゃんが井戸の確認に出た時に、桃代様たちと水着を買いに行って、その時に桜子さんから色々教えてもらったよ」
「そうか、俺たちが居ない時間帯に水着を買いに行ったのか。それで、桜子は何を教えてくれたんだ?」
「え~っとね、【海で溺れた紋次郎君を、わたしが助けてあげた】って、自慢してたよ。でも、子供の頃に桃代様に泳ぎを教えてもらったのなら、なんかヘンだよね」
「そうだな。ほら見てみろ、あそこで泳いでる桜子を、あいつも泳げるようになったようだけど、あの泳ぎで人を助けられると思うか?」
「えっと・・・絶対に無理。もしも、本当に溺れている人が居て、隣で桜子さんが泳いでいたら、どっちが溺れているのか、わからない・・・あれ? もしかして、いま桜子さんは溺れてる?」
「どう見ても、そう見えるよな。でも、本人曰く、わたしの泳ぎはダイナミックなんだとよ」
「あ~あ~桜子ったら、若い女の子なのに、酸欠状態のオコゼが口を
「桃代さん、無理を言わないでね。あの状態の桜子に近付いて、どんだけ頭を叩かれたか。そのうえ痴漢容疑をかけられて、いい迷惑ですぜ」
桜子は無視して、他の奴らを見てみると、さすがは漁師の娘とその奥さん、ユリと椿さんは無難な泳ぎを見せている。
苺は・・・やっぱり、あいつはヘビだ。水面をうねうねしながら浮いている。
巻き付かれたらイヤなので、近付かないようにしよう。
桃代とキーコに手を引かれ、俺は海で遊ぶことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます