第235話 悪いパターン
キーコと俺は砂浜で、砂のお城ではなく砂の祭壇を作り、そこに花と線香を供えると、全員で両手を合わせて冥福を祈る。
酒は供えなかった。
それが終わると椿さんは食事の用意を始め、キーコは手伝いに入り、明るい笑顔を見せ始めた。
ユリの親父はBBQをする為に、このクソ暑い中で炭に火をおこしグリル番をさせられている。
ここで火を使ってもいいのかな? 見つかると怒られそうな気がする。
ユリと苺はテントを張っている。
完全にキャンプだ! こいつ等は完全にレジャー気分だ。
波打ち際では桜子が、龍神に冷たい海水を掛けられて船酔いから
それはいい、乗り物酔いは辛いからな。
けど、どうして水着なんだ? もしかして、桃代やユリも水着を持参している?
そういえば田中の店で、この水着はどうですかって、椿さんに聞かれた。
まさか椿さんも?
いったい何がどうなってんだ? 俺はもう気が狂いそうだった。
そんな発狂寸前の俺を見て、桃代は俺の手を取ると、さっきより遠い場所に連れて行き、この茶番の真意を話し始めた。
「もう、そんな困った顔をしないの。紋ちゃんの考えは理解してる。キーコの母親に呼んでもらう。そういうつもりなんでしょう」
「そうだな、俺にはそれしか出来ないからな。それがわかっているくせに、どうしてみんなを連れて来る。やかましくて集中できないだろう」
「うん、まぁ、そうなんだけど、集中したところで呼ばれないよ。そもそも遺骨が有るのか、紋ちゃんにもわからない。有ったとしても呼んでくれるか、それさえ自信が無い。だからキーコに協力をさせようとしている」
「あれ? なんで? どうしてそこまでわかるの? ももよさんはスプーンを曲げられる人?」
「そうじゃないでしょう。【俺をここまで理解してるのはモモちゃんだけだ。モモちゃんは世界一の女だ。モモちゃんの為に、黄金のマスクを作ってやるぜ】って、なるところでしょう」
「いいか桃代、俺を理解してんだろう。だったら、黄金のマスクを作る、なんて言わないことも理解してるよな!」
「えへへ、今のは
「ももよさん、怖い怖い。そこまで当てられると、ただの恐怖ですぜ。あなたは変な人体実験で、妙な装置を俺に取り付けてるの?」
「もう、こんなの簡単な推理でしょう。紋ちゃんの行動と思考を考えれば、誰にでもわかるわよ。いい、キーコに辛い事をさせる必要はない。ここで楽しくしているだけで自分の存在をアピールできる。その為に、みんなを連れて来たの」
「あれ、確かにそうだな、桃代の言う通りだ。キーコに辛い過去を思い出させる必要はないな」
「そういう事よ。紋ちゃんの考えは基本的に間違ってない。だけど、あと少し考えが足りて無い。キーコが楽しくしていれば、死んだ母親も安心するでしょう」
「うっ、さすがモモちゃん。そこまで考えているとは。だけど、ここでキャンプなんてしていいの?」
「いいでしょう。元々ここは鬼が住んでいた鬼の土地なのよ。キーコが喜んでるからいいじゃない」
「そうですか・・・・桃代さんは
「いいわよ、いざとなったら、一番年上のユリの親父に責任を取らせるから」
もしかすると、鬼は桃代なのかも知れない。
桃代の真意を聞き終わり、みんなの元に戻ると、さっきまでの
キーコは楽しそうにしている。
無理して明るく振る舞っている、そういう感じではなく、本当に楽しんでいるようだ。
だが、やはりと言うか、まさかと言うか、みんなも水着に着替えている。
ユリは黒いビキニを着ている、
ただ、なんでお尻にユリの花がプリントされている? 葬式の
椿さん、【それはやめた方がいいですよ】って、あなたには言ったでしょう。
紫の生地に真っ赤な椿の花の刺繍が入るワンピースの水着。悪趣味か!
おい、ユリの親父、おまえはなんで赤フンなんだ? 万が一、横から何かがはみ出ると苺に踏み潰されるぜ。
それから苺、おまえはいつの間に水着を買って貰ったんだ?
なんだそれは? 白ヘビだから白いワンピースなのか? 腰の辺りにあるイチゴのマークはなんだ? 桃代の影響か?
キーコ・・・おまえだけは裏切らないと思っていたのに、俺の知らないうちに水着の用意をしていたなんて・・・確かに、桃代に買って貰う約束はしていたようだが、言ってくれよ、水着を持参してるって。
まあいい、そら色のワンピースの水着が、よく似合っているぜ。
ただ、腰の辺りにあるマークはなんだ? もしかしてそれはおにぎりか?
どいつもこいつも変なマークで自己主張をする。
俺はもう色々とイヤになってきた。
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