第210話 五人で朝食

桃代とキーコがシャワーを浴びてるあいだ、俺は龍神へ食事を持って行き、先に食べてもらう。

一応は神様だし・・・それに、お腹が空いたって、やたらとうるさいからだ。


髪を乾かすのに時間が掛かっているのだろう、なかなか桃代とキーコがやって来ない。

しばらく待ち続け、全員揃ったところで食事が始まった。


ユリと桜子が作ってくれた朝食、和洋折衷は別に構わない、他所よその家の食卓に文句をつけるつもりもない。

ただ、俺の目の前に、ご飯とトーストを一緒に出すなッ!


おそらく、俺をおちょくる為の、桜子の発案なのだろう。

ニヤニヤしているユリと桜子を無視すると、俺はトーストをおかずにご飯を食べる。

う~ん、見事に口の中で調和をしない。


さっさと食べ終わり、俺のような食べ方をしないようキーコに教えてやり、ユリと桜子を睨むと、二人ともバツの悪そうな顔をしたので何も言わない。

わかってるのなら、最初からやるな。


そのあとはキーコの様子を見ながら世話をしてやる。

ユリと桜子は昨夜の続きのように、やたらと桃代に話しかけ、会話が渋滞している。


「ほらキーコ、これは食後のお茶で珈琲という物だ。苦かったら砂糖とミルクを好きなだけ入れて飲め」

「ありがとうモンちゃん。それはそうと、どうして首が変な方向に向いてるの?」


「これか? これは、誰かさんの所為せいで、寝違えただけだから気にするな。それよりも、どうだ身体からだの調子は?」

「うん、お布団がふかふかでグッスリ眠れたから、すごく調子が良いの。それからね今度桃代様が水着を買ってくれるって。それで、みんなで泳ぎに行こうだって、楽しみ~」


「そうか、そうか。でも、まだ無理はするなよ。じっくり回復させて体力をつけないとな」

「うん、桃代様と同じくらい大きなオッパイになる事があたしの目標だから、頑張る」


キーコが桃代に感化され始めた。

それが良い事なのか悪い事なのか、俺には判断が出来ない。

なにせ、オッパイが目標なのだから、大きくなったか? なんて迂闊な事は聞けないし、ジロジロ見たあとで、大きくなったな、なんて迂闊な事は言えない。


キーコは楽しげに、大きくなる秘訣を桃代に聞き始め、ユリと桜子は静かになり、一緒に聞き入っている。

俺はこの手の会話に混じりたくないので、席を立つと必要な物の用意をする。


まずは、シャベルだ。

桃代の予想通り、本当にピラミッド山がもう一つあるならば、入り口を掘らないといけない。

その為にはシャベルが必要になる。

ちなみに、西日本では大きい物がシャベル、小さい物をスコップ。東日本では逆だと聞いた事がある。どこまで本当なのだろう?


シャベルは、文箱を見つけた蔵の中で見た気がする。

ユリにシャベルを借りると告げた後で蔵に入ると、すぐそこに立てかけてあった。


リュックを背負いシャベルを持つと、俺の準備は完了だ。

あとは桃代だけなのだが、女が四人、おしゃべりをしながら食べてるので、なかなか食事が終らない。

おまえが余裕を持って、朝から出掛けようって言ったくせに、早くしろよな。


「ももよさん、オイラの方は準備完了ですぜ。そろそろ、そちらも終わりにしませんか?」

「ごめ~ん、もう食べ終わってるから、いま片付けるね。あと、わたしの荷物は用意してくれた?」


「なんだ、おまえの荷物って? 俺が用意するモノがあるのか?」

「だからね、わたしの水着とバスタオル。あとは替えの下着と替えのワンピース」


「いいか桃代、さんざん待たせた挙げ句、俺をおちょくるつもりなら覚悟しろ。おまえは、どこで泳ぐつもりだ」

「だって、何かあれば、龍神様が流してくれるでしょう。紋ちゃんばかりだと、申し訳なくて」


「悪いな桃代。だけど、その手の気遣いは無用だぜ。仮に、取りくような何かがあれば、俺の方に取りくからな」

「そうでなくてね。ほら、水着だと、ずぶ濡れになった紋ちゃんと海で一緒に遊べるでしょう。そうしたら人魚姫ごっこが出来るじゃない」


「いいか桃代、海の泡になりたくなかったら、それ以上喋るな。さっさと用意しないと、おまえはキーコと一緒に留守番だ」

「うっ、すぐに用意をしますので、置いて行かないでください」


クスクス笑うキーコを見ながら、俺は桃代を待ち続ける。

毎度のことながら、事がスムーズに運ばない。

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