第206話 面倒見

バカが二人と一柱ひとはしら、バカ騒ぎをしているうちに日も暮れて、ユリがメインで夕食を作り、にぎやかな食卓にキーコは満足すると、百合はこれからのキーコを思い安堵していた。


食事の後は、三百年の時差を埋める為に、桃代はキーコに現代を教えてやり、キーコは、スイッチひとつで明るくなる部屋や、テレビなどの電化製品に驚き満載だった。


【そんなに一度に教えると、知恵熱が出るぜ】そんな注意を桃代にすると、知恵熱は乳児が出すものだと教えられ、俺までキーコの横で学習をさせられた。


隣で学習するキーコは、物凄い勢いで知識を吸収していく。

俺はこの時、【鬼のようだ】の意味を間近で実感できた。


この勢いだと、俺と桜子は【あなたたち原始人?】って、数年後には言われそう。

まあ、優しいキーコの事だ、そこまでさげすんだ言い方はしないと思うが、もしも言われたら確実にヘコむ。


桃代は無理をさせないように、適度な時間で終了し、またもやキーコを連れて風呂に行き、ユリと桜子も後に続く。

百合は眠たくなったのか、欠伸あくびをしながら仏壇の中に姿を消した。


・・・そうだった、俺の幼い時と同じだ。桃代は俺とは比較にならないほど、面倒見の良いヤツだった。

これでミイラに取り憑かれてなければ、言う事ないのに・・・残念なヤツ。


さてと、桃代が入浴してるあいだに、俺は明日の準備を始める。

何があっても良いように、必要になるかも知れない物をリュックに詰めて、それが終ると庭に出て龍神に声をかけた。


「なあ龍神、明日なんだけど、おまえも一緒に来てくれない?」

「あのな~ダメじゃと思うで。桃代さん、【明日は紋ちゃんと二人でピクニック】って、言うとったじゃろう、ワシがついて行くと不機嫌になるで」


「だから、姿を消してついて来ればいいだろう。おまえは妙なところで桃代に遠慮をするな? なんか理由があるのか?」

「紋ちゃんは相変わらず馬鹿じゃのう。ワシは遠慮をしとる訳ではない。桃代さんがデート気分でおるのに、お邪魔虫になりたくないんじゃ。少しは女心をわかろうとせんかい!」


「ぐっ、まさか、おまえに女心をかれるとは・・・俺はもうダメかも知れない」

「また~ 紋ちゃんはすぐにズレた事を言う。あんたがダメなんは、今に始まった事じゃないじゃろう」


「あ~あッ! テメエ、調子乗ってんのか!・・・って、言われてみるとそうだな。今更だよな・・・」

「それよりも紋ちゃん、まだ明日の予定を話してないじゃろう。ちゃんと打ち合わせをした方がええで。ワシが思うに桃代さんの頭の中では、今回の件は解決出来とるかもしれん」


「うそ! 俺にはまだ全貌が見えてないのに、あいつは解決してんの?」

「まあ、そこが桃代さんの頭と、紋ちゃんのバカ頭の違いじゃのう。ワシは質問に答えただけじゃけど、なるほどなって思うたもん」


「そうなの? おまえはその質問を聞いて、何か納得が出来たの? おまえも俺と同じバカ頭なのに納得できたの?」

「なんじゃい紋次郎! ワシまでバカ扱いしおって、ワシは龍神様で! ぞんざいに扱ってええ存在じゃない! もう少し丁重ていちょうに扱わんかい」


「あのな~ 憶えてるか龍神、俺はあまちゃんからおまえを一任されている。それがどういう事なのか、わかってる?」

「あっと、ワシも紋ちゃんと同じバカ頭じゃけん忘れてました。これからもバカ同士仲良うしてくれ」


「それはいいけど・・・龍神、おまえは桃代に何を質問されたんだ?」

「紋ちゃんには内緒じゃ。言えば勝手に行動して、ろくでもない事になるからじゃと」


「そうか、じゃあ、桃代に直接聞く。今後、おまえには何も聞かないし何も頼まない。これからは桜子と仲良くするんだな。ケッ!」

「なんで、そげな冷たい事を言うんじゃ。ワシが喋った事がバレると、桃代さんに怒られるじゃろう。そしたら紋ちゃんが責任とってくれるんか?」


「うっ、そうだな、ごめん。おまえが怒られると、俺も怒られるな。明日の予定を決める時に、それとなく聞いてみるぜ」

「まあ、お互いその方がええけど、ワシからなんか聞いたって、バレんように上手く聞いてな」


龍神と実のない話をしていると、後ろから声をかけられて振り向くと、風呂から上がったキーコがパジャマ姿で立っていて、その後ろには桃代たちも立っていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る