第173話 不明

龍神と小さな声で雑談をしていると、調査を終わらせた桃代が満足そうな表情で外に出て来た。


以前、桃代自身が調査したピラミッド山の見えなかった内部に、得体の知れない空間が発見された事で、変な盗掘熱が再燃しなければいいのだが・・・俺はそっちの方も心配だった。


だが、機嫌良く出てきた桃代は、俺の予想が及ばない訳のわからない遊び、【ピラミッドごっこ】をしようと言い出した。

・・・??・・・本当に意味がわからない。


鬼ごっこは知ってるが、ピラミッドごっこってなんだ? 鬼の代わりにピラミッドが追いかけて来るのか? もしもそうならば、スゲー怖いぞ! タッチされた瞬間に、プチッと潰れて平べったくなるぜ。

もちろん、そんな遊びは日本に存在しない。


桃代は何かルールのようなモノを説明しているが、そもそも俺はその遊びをする気が無いので、無視して何も聞いてない。


面倒くさいと思いつつ、桃代にピラミッドごっこを中断し、中で見た事について話をするようお願いした。


「すみませんね桃代さん、その遊びはまた今度という事で。それよりも、中を見たあなたの意見を、先に聞かせてもらえません」

「もう、せっかく面白そうな場所を見つけたのに・・・・・でも、仕方がないわね。紋ちゃんが心配だから、そっちの方を優先させましょう」


「俺はですね、桃代さんの思考の方が心配なんですが、変な遊びを広めないでね」

「大丈夫よ、紋ちゃん意外とは遊ばないからね。じゃあ、場所を変えてユリの家で話をしましょう。龍神様は姿を消して近くに居てください」


「うん、まあ、それはええけど。なあ紋ちゃん、ピラミッドごっこって何? あげなノリの桃代さん初めて見たで」

「いいか龍神、そこの部分は絶対にツッコむな。くっそ面倒くさい事になるぞ」


桜子を呼び、ユリの家の裏口から庭に入ると、話をする為に蔵で整理をしている人も含めて、全員に集合してもらう。


ユリとその両親と爺さんは、マスク代わりに口をおおっているタオルを外すと、不安そうな顔で桃代を見ている。

それでも、ユリの親父は気を利かせ、全員に適当な椅子を用意すると、円を描くように座る。


桃代は、まず情報を集める事を優先したようで、ユリの家族に、代々伝えらている事などいろいろ質問をしていた。

俺は桃代の隣に座り、リュックからノートを出すと情報の整理をしていく。


「ユリ、そっちはどう? 蔵の中からそれらしき文献は何か見つかった?」

「いえ、それがまだ何も・・・なにぶん整理なんて一度もした事がないもので、まるでゴミ屋敷みたいな感じですから」


「あんたねぇ、大人なんだから、普段から整理整頓はシッカリしておきなさい。早く手掛かりを見つけないと、命の危険があるのよ」

「すみません桃代さん。このあと死ぬ気で頑張ります・・・父さんが・・・あと爺ちゃんも」


「桃代さんあなた、よく人の事を非難できますね。おまえの部屋を思い出せ。もしも、あの部屋で、コロボックルとかくれんぼをすると、一生見つからないような乱雑ぶりだっただろう」

「あうっ、でも、あれは何処どこに何があるのか、ちゃんと把握してるから、わたしなりに整頓が出来てるの。もうっ、変な茶々を入れないでよ」


「ユリさん、後でわたしも手伝います。わたしと紋次郎君はゴミ屋敷の片付けを何度かした事がありますので、慣れてます」

「助かります桜子さん。でも、もう少し自分達で頑張ってみます。紋次郎君もごめんなさい」


「いや、別に謝る必要はない。もともと俺は手伝うつもりがないからな。それより桃代、おまえの所見はどうなんだ?」

「そうね、まだ裏付けが取れないから断定は出来ないけど、あそこは元々いしろうだったのではないかしら。その上に盛りをして、牢屋ごと封印したんじゃないかな」


いしろう? ユリ、おまえの家は凶悪犯専用の宿屋だったのか?」

「いえいえ、わたしの家は宿屋ではありません、ウチは網元なんです。大漁の時は、宴会などで人が集まる事はよくありましたけど・・・というか、紋次郎君はちょっと失礼なのでは?」


「すまんユリ、今は考えを出し合ってるだけだから許してくれ。じゃあ、何処どこかから発見された呪いのかめを、あそこに入れて封印したとは考えられない?」

「それもね、なんか違う気がする。もしも、本当に呪いのかめなら、お寺や神社に持ち込む気がしない? ユリの家が管理する理由が分からない」


やはり龍神の言う通り、人間以外の何者かを閉じ込めて、あそこに封印したのだろうか?

あの足跡は、ソイツの物なのではないか。

どれもこれも憶測だ。

情報が足りない。

何か確証が欲しい。


ただ龍神が言うように、ここを出た後で死んだのなら、時間とともに終息するだろう。

あとは今日一日だ、今日中に俺が妙なモノに呼ばれなければ、ソイツは死んだ、もしくはこの島には、もう居ない。

そういう事になるのだろう。


あくまで龍神の考えなので何とも言えないが、最初に呪いに気付き、祓ってくれたのだから、少しは信用してやろうと思う。


それでも確証を得る為に、蔵の中の文献探しを俺も手伝う事にした。


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