第102話 後悔
部屋に入ると、桜子は心配そうな顔をして入り口付近で見守っている。
襖を開けた隣の部屋には、あまちゃんと従者の二人が正座して
桃代はあまちゃん達にお茶を出し、それが終ると神妙そうな顔をして俺を見ている。
俺は布団の横に座り優しく額を撫でながら、桃香の顔に掛かっている髪の毛を整えてやる。
そして名前を呼ぶと、桃香は薄く目を
「調子はどうだ桃香。俺が揺らしたせいで、気持ちが悪くなったりしてないか?」
「紋次郎・・・おまえに背負われ、おまえに守ってもらい、
「えっと、どうしてそれを?」
「わたしならここに居るわよ、ダークピーチ。あなた、
机の上に面の桃香を置いているのを、俺はすっかり忘れていた。
やっちゃったと思うが、それでも机の上にある面の桃香を、話がしやすいよう手に取ってやる。
「ふっ、気付いておったのか・・・あの日、神社に火を
「そう、それで後悔をしたのね。それで自分を消し去る為に
「そうじゃな。知らぬ事とは言え千年思い続けた
「そうね、あなたと同じ立場ならわたしもそう思うわよ。だって、もんちゃんの犠牲があればこその、わたし達の人生だったのだから」
「その通りじゃ。紋次郎、おまえは本当に誤魔化すのが下手じゃのう。握り飯を持ち訪ねてくれた時も、
「バカ! その程度のことを気に病むな、あとは俺に任せておけ。それからまだ消えんじゃねぇ。俺はまだ、桃香を満足させてない。今すぐしあわせな気持ちを思い出させてやる」
「ふふっ、紋次郎、
「いいから、あと1分待ってくれ。とびっきりしあわせにして
桃香は力なく薄く開いていた目を閉じる。
俺は湖で桃香が水浴びをしていた時に、山で見つけた小道具をリュックの中から急いで取り出すと、
それは、季節外れのまだ熟してない緑色をした小さな柿。当然、渋くてクソ不味い。
あまりの不味さに頬がピクピクする。あまりの渋さに口が
それでも飲み込み、片手で桃香の背中に手を回して少し持ち上げると、もう片方の手で桃香の手を取り握りしめる。
そして、桃香の口を俺の口で
そのあとで、桃香を見ながら話しかけた。
「おまえはホント面倒くさい女だな。その自信は
感じてくれたのだろう、聞いてくれたのだろう。
再び、桃香の目が薄く開くと驚いた顔をしている。
ただ夢の中とは違い、桃香の目には涙があふれている。
「あぁぁ、紋次郎、この味、その台詞、
御神体の桃香は最後の力を振り絞り、俺に対してお礼を言うと安らかな顔になる。
そして、俺の手を一度握り返すと、二度と握ってくれなくなった。
俺は桃香を抱き締めて、泣きたい気持ちを我慢した。
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