第24話 記憶
失われた俺の記憶。
この記憶はまだ仮定だ。
しかし、さすがは龍神、ヤツの
龍神の
確かこうだった。
俺は幼い頃に母親の実家にあたるあの家に、先々代の希望で夏のあいだ預けられた。
そうは言ってもこの田舎だ、幼い俺が遊ぶ場所は無い、遊ぶ相手も居ない。
退屈な俺は暇を持て
だが、一人だけ俺の遊び相手になってくれる人が居た。
そう桃代だ。
初日は、初めて会う親戚の子供を、桃代は遠巻きに見ていた。
しかし、次の日から桃代は俺を子分のように扱い、一緒に夏を遊ぶようになった。
家の中ではかくれんぼをして、外では鬼ごっこをして遊ぶ。
早起きが苦手な桃代の代わりに、朝顔の咲く時間を調べる観察もさせられた。
桃代の夏休みの宿題なのにだ。
当時の俺は、まだ小学校に
桃代の命令は絶対だった。
それでも、ひとりっ子の桃代は、小さい俺のめんどうをよく見てくれた。
一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入る。
寝る時は布団を並べて、一緒に眠る。
桃代はお姉さんぶって、とにかくおしゃまだった。
食事の時に【豆は栄養があるからね】そんな事を言いながら、自分の皿にある甘く
代わりに、俺の皿にあるウィンナーを持っていく。
いま思えば、自分の嫌いなおかずを押し付けた。それはわかる。
別に怒るつもりは無い。
俺は甘く
ただ、ご飯のおかずには合わない。
一事が万事そんな調子で、俺は桃代にいいようにされていた。
あの日もそうだ。
川で水遊びをしていた時に、桃代が偶然あの穴を見つけて嫌がる俺に中を見に行こうと言い出した。
ヤツが何かを言うと、俺の意見は黙殺される。
いまだにそうだ。
その
桃代も俺もここが
毎日、お菓子を持って来て、楽しくお喋りをして過ごす。
そんなお祭りのような毎日が過ぎ、俺が帰る前日に桃代は懐中電灯を手に持つと、洞窟の奥を探検しようと言い出した。
俺は怖くて反対したが、当然却下された。
嫌がる俺の手を引きながら、桃代は奥へ進んで行く。
さすがはミイラになりたい女、この頃から桃代の頭はぶっ飛んでいたのかもしれない。
俺は涙目で桃代について行く。
桃代は
いま考えれば、そうとうイヤなヤツだ。
そんな感じでぐずぐず進んで、いま俺と龍神が居るこの場所に出た時に、桃代は何かの物音に気付くと、静かにするように俺に命令をした
しばらくすると、別の入り口、おそらく正規の入り口から
俺も桃代も、今日の探検は二人の秘密にしてたので、他の人が入って来るとは思ってみなかった。他に入り口があるなんて知らなかった。
そして、
俺の母親!
そうではない。
母親の双子の姉、先々代の当主、桃代の母親の蘭子さんだった。
蘭子さんは俺達に気付くことなく、見えない何かに話し掛けている。
桃代は不安になったのだろう、明かりを点けて【マミー】そう呼びかけてしまった。
なんにしろ、当時からふざけたヤツだった。
桃代の明かりで、俺が居る事に気付いた蘭子さんは、笑ったようにも見える。
その瞬間、何か地を
目を覚ますと翌日だった。
死んではない。
いつもの布団に寝転んでいる。ただ、隣の布団に桃代はいない。
それから、仏間の方で女の人の争う声が聞こえた。
声の
二人共、かなりエキサイトしている。
そのうち、怒りを抑えきれない様子の母親が、俺を連れて家を飛び出した。
それから父親の車で帰路につき、その途中で事故に遭い、二人共帰らぬ人になった。
結局、俺の記憶の喪失は、
「なあ、龍神、おまえはなんであの時に俺に巻き付いたの?」
「あのな紋ちゃん、ここは当主しか入っちゃいかんのんで、桃代は次期当主じゃけぇええけど、紋ちゃんはダメじゃろう。ほじゃけぇ締め上げて気を失わしたんよ」
「それで? 気を失わせて、どうするつもりだったの?」
「そしたら目を覚ました時に、【夢だった】ちゅう事にできるじゃろう。ワシは優しいんじゃ」
何やら誤魔化された気もするが、ただひとつ、確かな事がある。
俺がニョロニョロしたモノが苦手になったのは、おまえの
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