第2話

あったかい

ふわふわ

大きなハングルの胸元に顔を埋める

あー体温ってこんなに気持ちいいんだ。



「おい、起きろ飯を食え」

言葉はぶっきらぼうなのに、限りなく優しい声と、大きな体に抱っこされる。

「誰?」

振り返ると超絶美形、闇に溶けたような紫と黒色の間の髪色

焔色の瞳

右目は金色

見ているだけで、魅了される

綺麗

「名前はない。皆魔王と呼ぶからな。お前はなんと呼びたい?」

歯医者要らずの綺麗な歯並びの美形が甘く囁く。口説かれているような気持ちになって、耳まで真っ赤になる。

えっと、あっと、名前

何がいいかな?

やっぱり

紫炎かな?

紫の炎で

「紫炎はどうかな?紫は昔は高貴な人しか身につけてはいけない色で、炎は、瞳の色

汚い物を浄化してくれそうで」

ダメかな?

ピッタリだと思うんだけど

こんなに優しい人は知らない

「ありがとう。紫炎確かに気に入った。名前を教えてくれるか?」

「一っていいます」

うさ耳を生やした男の人が、色とりどりの料理を持ってきてくれる。

異世界に来たのかな?

でも、あの世界には帰りたくない。

これは、何の肉だろう?

綺麗に取り分けてくれる

「これは、にーの肉だ、で横にあるのがサラダ、これはたーの焼いたヤツ。そして、主食が米だ」

なんだって、確かに米だ。

異世界って不思議だ。

で、食事は素材の味を殺していた。

殺人兵器の名前は大量の塩

ジャリジャリと言ったほどだ。

今まで自炊で培ってきた、努力をここで開花させる為に来たんだ、

「どうした?一」

ニッコリ笑う

「僕を調理班に入れて下さい、僕の味覚では辛くて」

「お子様だなー」

ニッコリ笑う紫炎

いやいや、違うだろ

塩味しかないんだぞ

大人も子供も関係ない

「紫炎の体が心配なんだ。塩以外の調味料ってあるのかな?」

「わからん、口に入れば何でも一緒だからな」

今まで自分だけで楽しんでいた食事も、これからはみんなで食べれる。

ひとりじゃない

みんなに美味しい物を食べて欲しい。

地味な料理しか作れないけど。

ニッコリ笑う

紫炎の大きな掌に顔を包まれる。

「何が楽しい?」

「皆に美味しいご飯を食べて貰おうと、考えるだけで笑顔が止まらない」

想像するだけで、楽しい

僕ぐるぐる巻きの血だらけの筈が、傷が綺麗に治っている。

ここの人達を守りたい

もし

もしも神様がいるのなら

ここの人達を守る力を下さい

紫炎の傍に生涯居られますように

ふわ〜と体が暖かく、次に燃えるように熱くなる


その願い聞き届けた

して

対価は

地球で培った記憶全部

料理の技術だけはのこしてくれたら

地球での僕の存在を無にしてください


了承した


頭に響くしゃがれた声

苦しい

暑い

助けて紫炎

フワッと体が浮いて

口付けられる

甘い

甘露

「一、俺の血を飲め」

甘い

僕も意識朦朧としながら、ほっぺを噛み血を必死で紫炎に飲ます。

自分の体が作り替えられていくような感覚になる。耳がよく聞こえるように。

紫炎の甘い吐息。

自分から、口付ける。

大好き

男とか同性とか関係ない

ただただ

惹かれる

分からない

身体中がこの人だと

「紫炎、僕のね」

「ああ、お前のものだ。お前も。

起きたらビックリするだろう。容姿も変わり命も一蓮托生の義を交わした。逃げられないぞ、一」

ぐっすり眠ったいる一の髪は銀糸に所々真っ白いメッシュが入っている。

これは、神からのギフト。

一は紫炎のお腹にグリグリマーキングするかのように、甘えながら熟睡。

紫炎は猛る体を持て余しながらも、ぐっと堪えて寝台に一を寝かせると、ギュッと抱きしめて瞳を閉じながら、煩悩の塊のまま眠る

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