第5話 『起きた』



 目を開くとそこには見慣れた天井があった。気づくと私は自分の部屋で寝ていたようだ。




 すぐ側にはアベルが椅子に座り、私のベッドにもたれ掛かるように寝ている。

 気絶した私をここまで運んできてくれたようだ。




 しかし、なぜ私は気絶してしまったのだろうか。




「……アベルくん」




 私は横で眠るアベルの姿を見る。




 あれだけおかしな力を持っているが、寝ている姿は普通の少年と変わらない。

 そうだ。勇者の息子であり、凄まじい力を持っているとしてもただの子供。




 私はそんなアベルの頭を撫でようと近づく。すると、




「師匠!! 起きたんですか!!」




 アベルが突然起きて、私の顎に頭を激突。再び私は意識を失った。





 なんやかんやで目覚めた私は、次の修行を付けることになった。




「次の稽古はなんですか?」




 ワクワクしながら私に聞くアベルに、ソファーに寝っ転がりながら答える。




「掃除よ。この家を掃除しなさい。後は洗濯と晩ごはんもよろしく〜」




 そう、私は気づいてしまった。何も真面目に稽古をつけてあげる必要はない。

 これだけ強いのだ。魔王と名乗ればいつでも魔王になれる気がする。ならば稽古などつけずに、こき使って、私の生活を楽にすれば良い。




 アベルが気付きそうになったなら、適当に言って誤魔化せば良いだろう。




 アベルは私の指示に真面目に従って、掃除や洗濯など家事をやり始める。




 心が痛むと言われれば、それは痛む。しかし、あれだけ酷い目にあったのだ。私だって、心を鬼にして金を受け取る。




 私は手に入れたお金で何を買おうか想像する。

 新しい魔道具。新しい杖。いや、これだけあれば、ダンジョンだって買える。それだけの金額だ。




 私がワクワクしていると、掃除をしているアベルが私を呼んだ。




「師匠。お客さんです」




 箒を手にしたアベルは窓から外を指さす。




「こんな時に誰よ〜」




 私は立ち上がり窓から外を見ると、そこには元魔王である私の上司がいた。





【後書き】


 元魔王登場?死んでなかった?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る