第4話 『私よりも強くね?』



 先程の一撃をまともに受ければ、私でもこの世界から消滅していただろう。

 それだけ強力な技。




「…………」




 私が何も言えずに立ち尽くしていると、アベルは下を向いて言う。




「やっぱり弱いですよね。この程度じゃ、魔王になれませんよね?」




 いや、十分なれますよー。てか、前の魔王より強いと思いますけど!!




 しかし、ここで狼狽えるわけにはいかない。金のためだ。金があればなんでもできる。




「そ、そうね。あの程度じゃ、村人にも受け止められちゃうわ」




「ですよね〜」




 どんな村人だよ! アホか! 納得するか!!




「じゃ、じゃあ、次は他の特訓にしましょうか?」




「え、手合わせはもう終わりですか?」




「ええ、あの程度じゃ話にならないもの」




 これ以上続ければ、私が死ぬ。




 私はアベルを案内して、森にある洞窟に連れてくる。




「この洞窟の奥にしか存在しない花をとってきなさい」




 この子の戦闘能力高さは分かった。この子は私の手に負える子じゃない。

 てか、先代の勇者より絶対強い。




「分かりました! 師匠!!」




 アベルは早速洞窟に潜っていく。




 この洞窟は入り組んでいて、一度入ったら出られないと有名な洞窟だ。




 彼自身には恨みはない。だが、私がアドバイスしてあげることもできないし……。




 私は家に置いてあるお金のことを思い浮かべる。




 あれだけの大金があれば、これからの人生。退屈する必要はない。




 私は勇者の息子は死んだものだと考え、この場から離れようとする。

 しかし、私が洞窟から背を向けると、




「とっ…………き、したー!」




 アベルの声が聞こえる。




 何か問題があったのだろうか。助けを求めているのだろうか。




 今思えば、私は金を受け取り、弟子入りを認めた。弟子を殺す行為は師匠として相応しいのだろうか。




 私は洞窟の方を向く。




 あの純粋な少年を見捨てて良いわけがない。




「待ってなさい! 今助けに!!」




 私が洞窟の中に入ろうとした時、中からアベルが飛び出してきて激突した。




【後書き】


 痛そう


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