第96話 キュウネル妖国編 終

ティアマトをボコボコにした次の日、俺達は予定より1日早めにここを出る事となる

朝食を終えて通りで聖騎士らが歩く狐人族を最後まで堪能しようとじっくり見ているようだな


『グスタフは魅力的な種族だと思わないの?』


ノアは馬車に乗り込もうとしたときに、そんな事を告げてきた

確かに魅力的だが、もう慣れたさ


『ガーランドに会うのが楽しみじゃな』

『また柚子蕎麦を頼むぞ』


クルエラやエルヴィン教皇がノアを見送る時にそんな言葉を発したが、彼女が軽く話をして馬車に乗り込んだのを確認するとクルエラの視線は俺に移る


目を細め、僅かに近付いてくる様子に俺は驚きながらクルエラから距離を取った

その様子を見ているティアマトは俺の正体を知っている為、目が泳いでいる


(一応バレてないな)


『グスタフよ』

『なんだ?』

『魔法使いで間違いないか?』

『そうだが』

『…雰囲気は瓜二つなんだが人違いじゃ』


なんなんお前?

匂いも気配も口調も変えてるのに同じ?

何を見てそう思ったのか俺にはわからん


『う…瓜二つ?』

『お主には関係のない話じゃ。また来るがよい』


微笑むクルエラに小さく頷き、俺たちは妖王クルエラとエルヴィン教皇を背にエンリケと共に馬車と共に進み始めた


会合は問題なく、ノアは来るときよりも雰囲気が身軽だと思われる

馬車の窓から顔を出し、クルエラ達に会釈する様子を見ればわかる


『可愛い子たちが…』


ハイドが残念そうだが、その声に触発された他の数名の聖騎士も残念そうだな


『ったく、観光じゃねぇんだぞ…』

『でも楽しかったですね。もうクリオネは見たくありませんが』


ジキットが呆れ、ミルドレットは苦笑い

時間が両国の距離を近づけていくのは明白であり、後はガーランドが先の先まで話し合う筈さ


(サカキ信仰協会か…)


歴史が深すぎる協会だ

古代魔導書も数多く地下保管庫に貯蔵されていると聞いたから今度来たら見てみたい


天属性魔法という俺が手にしたことのない記録もある

エルヴィン教皇は一部の本にあると言ってたな


(人が見てはいけない本か)


禁断の書って感じだから超厳重に保管してると聞くと凄い気になるが、諦めるか…


『王都で色々整理したらお家だぁ』

『ミルドレット、槍の特訓が待ってるぞ?』

『あ…あはは』


不気味な雰囲気で煽ると、彼女は引きつった笑みで笑う

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