第51話 悪童

グスタフがボトム第四将校と激突した頃

ファーラット陣営の本部であるテント内では不穏な空気が漂い始めた。


これには聖騎士だけじゃなく、ノアも気付く


(外の音が…)


戦場の全ての音、そして周りの音が聞こえなくなったのだ。

不気味に感じたノアはジキットに顔を向けると、彼は剣を抜く


『お前ら、敵が来たぞ』


騎士達はノアを囲むようにして武器を構える

外に出る事が容易ではないと誰もが悟ると、ここで迎え討つしかなかった。


『体が…』


聖騎士のハイドが呟く

この場にいる誰もが、体に倦怠感を感じ始めたのだ

それはアウェイという空間指定の身体能力低下魔法であり、外の音も殆ど遮断する効果を持つ



それは彼が来た証拠でもある

静かに開く入り口に皆が視線を向けると、5人の不気味な格好の者が姿を現した

黒い布で顔を巻き、赤い目だけが不気味に光るその集団は闇組織ゾディアックの幹部

中でも一際目立つ男がエイトビーストのシャンティであった。


(こいつら、やべぇな)


ジキットは瞬時に相手の力量を見抜く

額からは汗を流し、僅かに聞こえるせせら笑いが鳥肌を起こさせる


『シャンティ、何故だ』


ドウケは口を開くと、ハルバートを下ろして身構える

少し驚いた様子を見せるシャンティだが、答えは沈黙だ


会話など必要無い、そう言わんばかりにシャンティは右手の双剣をノアに向け、呟く


『やれ』


一斉に飛びかかるゾディアックに聖騎士やドウケは動き出す。

能力低下など関係ない、聖騎士はそれでも守らなければならない命の為に自らの命を賭けているからこそ心臓の鼓動が高鳴り始める


ドウケはすかさずシャンティに飛び込むと、ハルバートで素早く突き出す。

胸部を刺したと思った瞬間、残像だけが残る


『ドウケ、何故そこにいる』


背後からの声に振り返りながらハルバートを盾にシャンティの双剣を受け止めた。

スピードは負けており、ドウケが勝てるのは腕力

だがしかし、当たらなければ力も意味を成さない


『グッ!?』


ガードした瞬間にドウケの腹部を蹴って転倒させたシャンティは宙返りをし、着地と同時に懐に隠していた投げナイフを5本同時に飛ばす。


起き上がる時間さえないドウケは右腕で顔だけを守るが、全てのナイフは彼の体に深く突き刺さる。

それを見て僅かに笑い声を発するシャンティにドウケは右腕に刺さったナイフを抜いて気付いたのだ。


即効性の神経毒が塗られている

独特な匂いは毒を持つ花の匂いだったのだ。

だがドウケには毒は効かない

立ち上がり、一つずつナイフを抜くとシャンティに顔を向けて首を傾げる


『…いつも思っていた。お前、生を感じない』

『お前も、同じ』


周りでは一心不乱にゾディアックと戦う聖騎士

その音は彼らの耳には届かない

一人の聖騎士がシャンティの部下に胸部を刺されて近くで倒れても、二人は視線を向けない。


彼らだけの静寂、今にも飛び出しそうな雰囲気で彼らは睨み合うと、合図も無しに動き出す。


武器の金属音はこもったように耳に響き、互いに激しい攻防を繰り広げる

そんな激闘をノアは強く見守る事しか出来ない

両手を握り、倒れていく聖騎士に涙しながらも彼女は願う

どうか、一人でも生き延びてほしいと


王族だからこそ耐え難い光景を目の当たりにするが、彼女はこれが初めてだ

だからノアは自分の為に命を燃やす者に願う


『おらぁぁぁぁぁ!』


ジキットは背中を斬られて血を流しても、その勢いは止まらない

火事場の馬鹿力で敵の双剣を砕き、そして斬り裂いた。


『はぁ…はぁ…』


ジキットは周りを見渡そうとするが、そんな時間は無い

嫌な予感を感じた彼は振り替えると、ゾディアックの幹部の一人が飛びかかってきていたのだ。


(くっ!!)


まだ一人目、屈強な聖騎士といえどゾディアックの幹部相手では勝ち目は薄い

10人の聖騎士で4人の幹部を相手してもジキット達は押されていたからである


(こいつら!べらぼうに強ぇ!!)


自分が押されている

自分が苦戦している

その状況にジキットは苛立ちを覚えた

不良として喧嘩ばかりしていた自分を拾った人間を守れない?忠誠を誓ったのに裏切る?


彼は心の中に牢屋でノアに出会った言葉を思い出す


『貴方は素直じゃないだけ、人に感謝される力を持ってるの。本当の自分を見つけるためにこない?』


半信半疑だった彼は次第に彼女の本質に気付く。

馬鹿正直でまっすぐな女性、絶対に嘘はつかず、人の為に自らを犠牲にする存在

気づけばジキットは聖騎士となっていた


(この…クソディアックめがぁ!)


守れない屈辱、それと同時にとある者の顔が浮かんだのだ

守れなかったか?そう言われる事を彼は嫌った。

それなら死んだ方がマシしかしまだ死ねない

守らねばならないから


『嘗めんなよ糞溜まり集団どもがぁぁぁぁ!』


鬼の形相を浮かべ、ジキットはゾディアック幹部の双剣を弾き返した

怒号を上げ、異常なまでに興奮した彼は数年前のあの頃に戻る


『なっ!?』

『おらぁ!どうしたぁ!お前らなんぞ!』


ジキットは幹部の顔を左手で鷲掴みにすると全力で地面に叩きつけて叫ぶ


『目じゃねぇよ!!』


凄まじい腕力は幹部の脳を揺らし、動きを止めた

すかさず右手の剣でトドメを差すが、彼は腹部に双剣が刺さっていることに気付く

叩きつける瞬間に刺されていたのだ、熱くなりすぎて彼は今気付くと、その場に座り込む


(二人目だ…あとは…)


残りの幹部が1人、それはハイドと他の聖騎士2人が取り囲み、倒しきる事に成功する

ホッとしたい聖騎士らだが、まだ終わってはいない

まだシャンティが残っていたからだ


(あ…) 


ジキットはドウケとシャンティの戦いに視線を向けると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

ドウケはシャンティの双剣で胸部を深く刺され、その場に倒れる光景が見えたのだ


期待が絶望に変わる瞬間を目の当たりにした彼は腹部の双剣を抜かずに立ち上がる

残る聖騎士は4人、エイトビースト相手に分が悪いことは誰よりもよく理解していた


『くそっ…』


シャンティも無事ではない

なんと彼は右腕に力が入らぬほど肩をドウケに斬られて負傷していたのだ。

だらりと垂れる右腕は使えないとしても、聖騎士は自分達も立つのがやっとの怪我をおっているために険しい顔を浮かべる


『四人、問題無い』

『クソッティめが』

『ジキット…ノア様だけでも』

『諦めろハイド、倒しきらないと逃げ場ねぇってあの羊いってたろ、4人でやるしか…』


途端にシャンティから閃光が走る

突風が彼らを襲うと、聖騎士らは全身をかまいたちで切り刻まれたのだ。

深い傷ではなくても、体力の限界であり多くの怪我を負う聖騎士にとっては大きなダメージとなる


『がっ!?』

『かはっ…』


魔法という概念をうっかり忘れていたジキットは舌打ちを鳴らしながら仲間と共にその場に倒れた。

立ち上がれと何度も心の中で叫んでも体と意思は分断されていて体を僅かに動かすしか出来ない


最悪な状況にジキットは冷や汗を流しながらノアに目を向けた

こちらを見て何かを叫んで近づいてくる王女は彼の近くにきてようやく声が届いた


『大丈夫ですか!私が残ります!今ならまだ体を引きずって逃げ…』


彼女の言葉にジキットやハイド、他の聖騎士は絶望的な状況なのに苦笑いを浮かべた

何故他人の事ばかり考えるのだろう

王族ならば犠牲の上に成り立つ筈なのに、と


しかし、この女性がいてこそ彼らは命を賭ける価値があるから命を燃やしている

そう思うと、1人、また1人と静かに立ち上がり始めた


『死に損ない、意味ない!』


シャンティは驚愕を浮かべると、左手の双剣を構える 

満身創痍であるはずの聖騎士に僅かな不気味さを感じたシャンティは時間をかけると自らが危ういと悟る


一気に決着をつけ、ノアを殺す

彼はそう決めると全身の力を抜いて脱力を始める

誰もがその光景にゾッとし始めてしまう

シャンティは半分の力でドウケを倒しており、まだ本気ではなかったのだ

最初から力を出していれば、右腕を負傷することはなかったが彼はドウケの力を見誤ったに過ぎない


(マジか…ビリビリやべぇの感じるぞ)


ジキットは腹部を押さえながら武器を構えるが、立つのがやっとだ

それは皆を祈るノアも見ればわかる光景であった


(そんな…)


彼はグスタフの言葉を思い出す

自身の身が危ういと感じた時、使えと言われた魔法がある事を

しかし、それは誰かを守る為ではなく自分の為に使う為のおまじない

ノアは彼に言われたことを思い出すが、彼女にとって今がその時だった


(グスタフ、貴方はどういう時、私がこれを使うかわかってる?)


彼女は王族でありながら王族ではない

自分の幸せは他人にも分けるべき、そういう庶民的で一般的に考えやすい思想を持つ人間なのだ。

それは身近の人間達、目の前で息絶えた騎士、死を覚悟してシャンティと戦おうとしている者達にも向けられている彼女の夢

政治的取り組みでの制度や財政面での豊かさを彼女はあまり考えない


簡単は話をしよう

美味しい物を食べた場合、誰かこの美味しさを伝えたい

彼女はそんな単純で小さな幸せを色んな人に知ってもらいたいと思う変わった女性である

だからこそ、グスタフに何度も言われた言葉がある


お前は王族らしさがない


目の前で全員が死ねば、自分の幸せは死んでしまう

肉体的ではなく彼女の思想的な意味での話

だから彼女は1人でも助けたい一心で、涙を流しながら叫んだのだ


『ショーツ・アンヴァカ!』


グスタフのマジックアトラクションで自身が持つ魔法の1つを1回限り使用できるおまじないをかけられていたノアは、その魔法を唱えた

彼女の足元に虹色の魔方陣が現れると、その場の全員が驚愕を浮かべた

流石のシャンティも魔法陣を見て焦りを覚え、目の前に立ちふさがる騎士を倒す事をやめ、一直線にノアに駆け出した


だがしかし、魔法陣から吹き出す黒い煙が彼女を包み込むとシャンティは舌打ちをして辺りを見回しながらもノアの気配を辿る

気配感知は鋭い彼でも、この場にいたはずのノアや騎士の気配が全くない事に気づき、再び驚いた


何故彼がそこまで焦りを顔に浮かべたのかは簡単な理由がある

ノアが唱えた魔法は上位魔法でも超位魔法でもない

神位魔法と言う人が持つべきではない魔法だったからだ

ゾディアックの頭領であるシャンティは古代魔法書にてノアの唱えた言葉に覚えがあった


自らに加護を与えし使いを召喚し、敵を屠る

それは詠唱者の魔力袋の色そして強さで決まる

グスタフは彼女の魔力袋が何なのか知っているからこそ、使ってほしくはなかった

ノアはそれを悟っていたが、背に腹は代えられなく、どんな運命でも受け入れる覚悟だ


吹き出す黒煙はテント内に充満し、次第にシャンティの耳元にとある声が聞こえてくる

亡者の泣き叫ぶ声、断末魔という負の塊の音が響き渡っていたのだ

地の底から湧き上がるような呻き声が彼の周りを取り囲むと、シャンティは大きく叫ぶ

その声に、彼が気づいていない存在が口を開く


『欲望の先に無い、その場の快楽、その時の感傷、実に人間らしい』


次第にシャンティの近くの黒煙が晴れていくと、それは彼の前に現れる


『…ここまでか』


構えた双剣を下に降ろすほどの存在、それは人間には到底勝てぬ化け物の中の化け物

ノアの横にある椅子に座るそれは黒い長髪、腰まで長く、そして蠅が髪から顔を出すと周りを飛び交う

人間の様な顔をしているが、瞳は真っ黒であり不気味さを際立たせる

黒光りした鱗はいかなる攻撃も跳ね返し、鋭い角は禍々しくも羊の様に側頭部で渦巻く

腰からは黒い翼が生えており、赤いラインが脈の様に伸びる

下半身は人間が履く様なズボンを履いておりシャンティを笑みを浮かべて見つめていたのだ


『どうもバアル・ゼブルだよ。生涯で僕を見れる人間なんてラッキーだね、いや最悪か』


悪魔種、超位階級

名はバアル・ゼブル

本来、グスタフは彼が召喚されるとは思ってもみなかった

Aプラスのデュラハンマスターが来ると想定していたが、想像以上の化け物がノアの元に現れてしまう

これは対象者の魔力袋の色そして強さに比例する、それが答えだ


ノアの魔力袋は禍々しい黒色の袋、そして瘴気を放ちながら赤い光を放っていたのだ

1000年に一度、悪魔王に魅入られた者だけが手にする魔力袋の加護をノアが持っている

彼女はこの時、自分がどんな力を持った人間なのか知る

ランクS、人間が種族を守る為に国家総動員で挑まなければ倒せないほどの化け物を彼女は呼び寄せた


『…』


『時間は止めた、動いているのは君と僕…そして』


バアル・ゼブルの後ろから現れたのはノア

彼女は驚きながらもシャンティとバアル・ゼブルを何度も見る

ノアだけでも殺して、そうシャンティは考えたが無理だ、彼には心が読める


『無理だよ?、彼女を殺そうと動く前に僕は君を10回殺せる。』

『くっ!何故、悪魔が!』

『綺麗な存在には恩恵を与えなくちゃと思ってね、僕はずっと冥府で彼女が生まれる前から彼女を見ていたんだ。綺麗な魂に綺麗な未来、人の生きる藻掻きはきっと彼女が一番さ』


言葉を並べながら右の手の平をシャンティに向ける

するとその手はボコボコと音を鳴らしながら沢山の目を発生させ、それはシャンティを凝視する

不気味を通り越す異常な光景に、あのシャンティも息を飲む


『悪魔を勘違いしてるけども、悪魔は人間そんな殺してないよ?天使の方が凄い非道だからね?結構人助けするんだよ?』


それは立ち上がり背伸びをする

ノアはただ立ち尽くすばかりであったが、彼に視線を向けられると無意識に姿勢を正す

だが悪い人だとは彼女は思わなかった

恐怖を形にした存在なのは見て理解したが、それは力があるからだ


『あ…あの』

『この場を救済する代わりに代償を支払ってもらおう…悪魔だからね』


彼は腰の羽を羽ばたかせると、風が舞いそして何かを斬り裂く音を響かせた

ノアは体を強張らせたが、予想とは違う代償であることに彼女は気づいた

バアル・ゼブルの左手に握るそれはノアの髪の毛、長い髪をバッサリを切ったのだ

命とか目とか考えていた彼女はホッとするが、その考えを読み取ったバアル・ゼブルは笑う


『大丈夫だよ。君は傷つけない…、僕が加護を与えた人間なんだから特別サービス。まぁそれを壊そうとする人間は』


バアル・ゼブルの額に多くの目が現れると、彼はシャンティに顔を向けて言い放つ


『冥府の最下層コキュートスで魂が消えるまで楽しんでもらおう』

『っ!』


シャンティは動き出そうと体に力を入れようとした、しかし無駄な足掻きだ

動く前に動ける化け物が目の前にいるのだ


痛みなど感じる暇もなく、シャンティーの頭部は後方に吹き飛んでいく

一瞬の決着にノアは驚くが、倒したそれは溜息を漏らす


『悪魔は怒らせると怖いよ?まぁ天使よりマシか、あいつら笑いながら一度人間の殆ど殺したし』

『あ、あの!』

『あぁ大丈夫だよノアちゃん。君には危害を加えない…その代わりにいつも通り君の描く夢を見せてよ。君が美味しそうにご飯食べる姿、僕好きだなぁ』


(悪魔…古代文書だと…)


読まれているとわかっていても彼女は考えた

審判の日という人間の大量虐殺は天使の裁きと記されているが、悪魔は人間に直接関与する存在ではなかった

いたずらに姿を現す事があったとしても、問題を起こすような幻の種族ではない


『だから悪魔は天使よりマシだよ?まぁ勝手に悪魔宗教とかで色々馬鹿みたいに崇められるとこっちも怒るけど、だってさ…考えてごらんよ、僕の宗教で変な騒ぎが人間界で起きたら僕ら何も悪くないのに印象悪くなるでしょ』

『はい』

『怒る、わかる?』

『それはそうですね』

『良い子だ』

『ねぇ…あの』

『バブちゃんでいいよノアちゃん』

(怒られないかな…)

『怒らないよ』

『ならバブちゃん。私は凄い真っ黒な魔力袋で、凄い能力あるの?』

『そうだよ、僕が与えた加護だけど…君の心に影響が出る事は無いから大丈夫。ただ人間の王族となると黒い魔力袋、それも禍々しさがあれば…ね?君の父上も断固として教えない理由はそれ』


彼女は思い出す

ファーラット公国の大神官のもとで魔力袋の色を知る為にノアはガーランドと共に調べて貰った際、初めてガーランドは彼女に怒ったのだ


『自分の魔力袋の事を気にするな、わかったか?お前は優しい子だ。』


小さき頃の彼女には意味がわからなかったが、今ようやく彼女は理解した

見た目にそぐわぬ桁外れの能力、素質、力、将来性を兼ね備えた存在

でもノアはあまり驚かない、やりたい事に影響しないならば問題ないのだ

単純に生きる彼女だからこそ、加護を与えた存在は満足そうに笑う


『それでいい、あえて良かったよノアちゃん。僕はいつも君を見守っているよ、毎日美味しい食べ物、食べてね?あと袋の話は誰にも言ったら駄目だよ?』

『わかった、ありがとうございましたバブちゃん』



彼女は仲間が助かった事に心から感謝を告げ、彼の手を握る

これにはバアル・ゼブルも驚くが、彼女の純粋な感謝を感じると、何も言わずにギフトをその場に振りまいた。そして彼の姿は黒い煙と化して消えていく


『じゃあね、タイムマジック…君の純粋な心に必要な人間は無事だから泣かないで』


黒い煙が一瞬で消えると、騎士達が動き出す

何が起きたかジキット達にはわからない、知るのはノアのみ

そんな彼女は生き残っていた騎士達と驚くべき光景を目の当たりにする

殺されたはずの騎士が上体を起こし、首を傾げていたのだ


『あれ!?俺は死んで…』

『首がぁぁぁぁ!って首ある!?』

『ガル!ゲイル!それにお前ら!』


全員が生き返っていたのだ。

しかもジキット達の傷もなかったかのように消え、戦闘前の状態だったのだ


(タイム・マジック?)


超位魔法タイム・マジック

指定した対象の時間を戻す、それは死んで間もない人間でも生きていた時間までさかのぼる事が可能であり、実質それは蘇生という扱いでも使われる

グスタフは1人だけに使えるが、バアル・ゼブルは空間指定でそれが使える


彼はノアの今後の為にその魔法を人間界で使ったのだ


(ありがとうバブちゃん)


彼女は涙をぬぐい、深呼吸をすると気持ちを直ぐに切り替える


『みんな大丈夫ですか!?』

『ノア様、俺達生きてる…』

『一先ずその説明はあとです!』

『ノア様泣いてる?』

『いいから戦場の様子を!』


シャンティは死に、騎士の一部はゾディアックの死体を保管するために運ぶ

その最中、忙しなくテントに入ってくる騎士が床の血だまりに驚きながらもノアを前にし、彼女に報告したのだ


『報告です!ディバスター第五将校の左軍、にて動きあり!』

『話なさい!』

『ミルドレット大隊がボトム第五将校を討ち取り、今リングイネ第三将校を…』


ノアは目を見開き、その知らせを聞いて驚愕を浮かべる

そして今日エイトビーストのシャンティは最悪な形で、その命を刈り取られた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る