第20話 かかりちょーさん
「どうしたんですか…?かかりちょーさん」
いろいろと考え事をしながら給湯器の前でマグカップに緑茶が注がれるのは待っていると声を掛けられた。
「いきなり驚くよ…」
振り返ると山下さんが、いつもの白いマグカップを両手にかわいく持って順番を待っていた。
「かかりちょーさんは、自販機で有料のお茶のほうがいいのでは…」
まったく、山下さんまで…
「からかわないでよ…、山下さん…」
僕は自分のマグカップを大事に機械から抜き、山下さんにその場を譲った。
僕の白いカップは誰がしてくれるのか、相変わらず漂白されていてきれいだ。
「よかったですね、おめでとうございます。かかりちょーさん」
「よくないよ、補佐だし、給料ほぼ変わらないし」
「らしいですね…」
「本当だよ…。外食はやめてお弁当でも持ってこようかな…」
「いっしょに食べますか? 会議室で…」
笑っている。やっぱりかわいいね。
そう、女子社員は会議室でよく食べている。だけどちょっとね…
「若くてきれいな女性たちといっしょだとね、ドキドキして食べられないよ…」
「そうですか? 小杉さんだったら大歓迎ですけれどね。でもな~」
「でも?」
「かかりちょーさんが女子と食べているのもカッコわるいですかね…」
あんまりいい絵じゃないね、言われてみれば。
「残念だね、やっぱり補佐なんかになるもんじゃないよ…」
「元気だして下さい」
山下さんはそう言ってマグカップを片手に持ち、もう一方の手でポケットをごしょごしょと難しい顔をしながら探って、なにかを取り出した。
「どうぞ、あげます。おいしいですよ」
あの飴だ。
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