第15話 そうなの…
なぜか高梨さんと話が弾んだ。
高梨さんは僕の家族構成も趣味も知っていて、というか山下さんに話した内容すべてを熟知していた。
おまけにこの前行った城ヶ島が楽しかった、風が強かったけれども、かえってよかったかな…、などとも言っていた。ネギトロ丼もまた食べたい、今度は私のCDを持っていくから車に積んでおいてね、でも、趣味には合わないかな…フフとまで話してくれた。
そしてもっと不思議なのは、なぜか彼女のことを僕も良く知っていたことだった。
家族構成、もよりの駅、趣味やこの会社に入った事情なんかも…。どうゆうわけか自然と頭の中に入っていて、というか入り込んでいて、会話が異常なくらいスムーズだった。そう、僕らはすでに付き合っていて、いい仲のように思える、そんな状態だった。
楽しいよ、そりゃあね。美人と親しく話してさ…。ちゃんと仕事していれば出世するかもね。
でも異様だよ、こんな状態。それになんで僕はこんな異常なことをすべて受け入れているんだろう、それもおかしい。
心の奥では納得していないのに、そのままにしてさ…。
山下さん…、そうだよ、彼女との楽しかった時間はどうしたのさ。
「幸運の女神」だったのに…。この幸運は山下さんとのことから始まったと思っていたのに…。違うのか…。
すると、この幸運の連続、ツキすぎの原因がさ…、全然わからなくなっちゃったよ。
そりゃあね、高梨さんは十人中十二人が美人だっていう人だけど、僕はやっぱり山下さんが…。
小杉!おい、小杉、どうしたんだよ!
どうしたんだろう…、僕は…。
昨日は時間とともに緊張も違和感も抜けて、山下さんと話していたように高梨さんとも話せるようになった。いいことなのかどうなのかわからないけれど…きっと、たぶんいいことじゃないよ、真面目な僕のやることじゃない。
だけど携帯に来ていた山下さんの過去メールもいつのまにか送信者は高梨さんになり、当然僕の送信した宛先も高梨さんになっている。
そう、さっき来たメールも
「昨日もごちそうさまでした。また誘ってくださいね」
とのことで、送信者は当然高梨さんで、“昨日も”ということだから、もっと前も僕は彼女と食事をしたらしい…。
つまり“入れ替わっている”、山下さんが高梨さんと…。
二人がいっしょになって僕をだましている?まさか…。人のメールまでPCや携帯に入って換えられないし、それに何のためにさ。
ん…ひょっとして僕が間違っている…。ずっと山下さんと付き合っていたと思っていた僕が間違っているのか…?
今の自分こそ本当の自分だっていうの…?
え…、そうなの…、そうかな…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます