第7話 セレクション

「ほいよ…」

係長が僕の席に寄ってきて封筒を差し出した。人事から部長、課長、係長と通じて僕のところにきたらしい。開けてみると会社負担の英会話教室受講案内であった。そういえば申請したけれど、社内抽選と業務都合でセレクションされるって言ってたよな。


 ん…、選ばれたのか…?おいおい、くじ運は人の二倍悪い人間なのに、なんで。


「業務の調整はまかせるけれど、このシステム部から選ばれたのははじめてだよな~。なにか人事部に細工しただろう!」


「係長、いいですか、これは普段の行いです!きっと他部署でも見ている人は見ているんですよ。なんでシステム部内だと扱いがひどいんでしょうね~」


 みんなクスクス笑っている。うけたようだ。でも同期の吉沢が憮然とした顔をしている。


「なにが普段の行いだよ! 俺も出したぜ。システム部内の扱いはこれからどうなるか楽しみだな、本当に…、小杉!」


 吉沢…、お前怖いよ。がたいもいいんだからさ。僕は係長に助けを求めた。

「係長…、異動希望だしてもいいですか?」

 自席に帰りながら係長の背中が僕に言った。


「かまわねえぞ、きっと、どこの部署でもすっごく大事にしてくれるだろうな。なんていったって、小杉さんは普段の行いが断然いいからな! まあシステム部での送別会はないぞ、俺たちはさ、すっげー冷たいからな!」

 またみんなクスクス笑っている。みんな怖いよ。


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