第6話 最近ツイてる

「ごちそうさまでした。おいしかったです!」


 予約なしでもOK、おすすめメニューもチェックしたかいがあった。坐忘、おいしいね。山下さんとは多少お酒の力も借りたが話しははずんだ、というか、逆にいろいろと家族構成やら趣味やら、仕事の内容やらを訊かれた。


「システム室ってすごいですね。なんでも知っているし…関わっているし…」

 かなりおせいじがあるのだろう、でもうれしい。

「関わっているけれど、固有案件…、この代理店にはこの伝票でこの請求書でってなんてわからないよ。山下さんみたいに実務は無理だよ…、すごいと思う」


 これは本音…。実務や先方様と直にわたりあうのはちょっと無理…。


「そうですか? 慣れですね~。でもほとんどほめられたことがないので、うれしいです!」


 ニコニコと笑っている。大きい目が細くなって半円を描いている。まつげもながいんだね…、テーブルをはさんでいるがそんなに遠くないのでよくわかる。ということは僕の若白髪も気づかれてるな、切っておけばよかったよ。まあ仕方ないけれど。


「ご満足頂けたようでよかったし、僕も楽しかった」

「ええ、私もいろいろお話できたし、楽しかったですよ。でも、どうしてこのお店知っていたんですか?ちょっと気になっていたお店だったので、誘われたときは驚きました!」


「え…、ああ。あ~、うんとね…」

 かわいい顔がなんて僕が言うのかと思って、じっとこちらを見ている。え~っと。


「そう!がんばって探したんだ。良かったでしょ?」

「はい!おいしかったです!」


 “君の為に探したんだ”


 が最高の返答だったろうけれど、そこまで言う勇気はなかった。でも本屋で盗み聞きしましたよりはよかっただろうね、なんか最近ツイてる!

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