英雄でいるの疲れたし、拾った幼女達を育てたら隠居を…ってなんで俺に懐いてんの!?

英雄でいるの疲れたし、拾った幼女達を育てたら隠居を…ってなんで俺に懐いてんの!?

作者 彩雲姶良

https://kakuyomu.jp/works/16816452218927619874


 現代の衛生管理と食生活ができる中世ヨーロッパ風の剣と魔法と獣人と人が暮らす異世界を舞台に、元英雄の弄月彩支が獣人で狐族の雪月花白を拾い、美味しいものを食べながら面倒を見る物語。



 作品内容がわかるような長いタイトルがついている。異世界ファンタジー物で孤児院でもしたら懐かれたという話かしらん。

 捨てられ、行き場を失った犬や猫を保護し、一匹でも殺処分から助け出そうと里親が現れ引き取るまでのあいだ動物たちを育てる保護施設があるのだけれども、そんなような話に近いのかしらん。読んでみなければわからない。


 文章の書き方や誤字等については目をつむる。


 異世界転生ものかとおもったけれども、違うっぽい。すでに異世界に転生して活躍したあとから、物語ははじまる。

 プロローグは主人公は雷鳴翼と呼ばれたかつての英雄、弄月彩支一人称「俺」で書かれた文体。

 幕間は、弄月彩支の義妹で元聖女の狼少女である彩雲時紫の転生後、時任有栖の一人称「私」で書かれた文体。

 本編は、獣人で狐族の雪月花白の一人称「私」で書かれた文体。弄月彩支である一人称「俺」で書かれた文体もまざって入ってくる。

 会話が多く、自分語りなやや説明的な表現がみられる。

 三人称に統一するか、各話ごとにキャラ視点を変えるかすると読みやすくなると思われる。

 

 プロローグがあるのにエピローグがない。一旦は完結し、後日再開予定かもしれない。あるいは、「犬の老人と魔物のハンバーガー」がエピローグにあたるのかもしれない。

 プロローグの内容は後日談なので、エピローグの要素も含んでいるのやもしれない。


 プロローグでは、弄月彩支と七歳の雪月花白がレモンパイを作って食べている。「甘い匂い」「甘い香り」とある。

 ショ糖分子は、鼻からの吸気を伴う嗅感覚で感知するには重すぎるので、甘い香りというのは、糖度の高いデザートによく使われているバニラやシナモンのような香りから、味を連想して表現されるだけで、実際に甘い香りはない。

 フルーツのような香りやカラメルの風味を表現するときに「甘い香り」と用いるのは、文化や個人の経験からくる主観なのだ。

 アイスクリームのフレーバーに用いられているのはラン科バニラ属のつる性植物バニラの果実であり、同様にスパイスを取り入れた料理は実際よりも甘く感じてしまう。また、ベトナムでは甘い飲み物に生レモン果汁を入れるため、レモンから甘さを連想してしまう。

 なので、弄月彩支は主観で匂いや香りから甘さを連想しているので、それらを食した経験がある。つまり、異世界転生をしてきたのではと伺える。

 それ以前に、本作にはレモンパイやいなり寿司、肉まんにハンバーガーなどなど聞き覚えのある食べ物などを作って食べたり登場したりしているので、異世界に誰かが持ち込んだかあるいは、異世界で独自に味も形もネーミングまでそっくりそのまま同じものが存在したかのどちらかであろう。


 前半、「世界が八匹の龍に襲われた時」「英雄たちと共に龍を倒し」たあと引退した元英雄の弄月彩支に拾われた雪月花白は「教育者としてお前を大空へと連れ出してやる」と言った彼と魔法樹の中に入る。本棚から一冊本を手に取り、扉が開く。図書館の中にある彼の部屋の風呂に入り、いなり寿司を作って食べ、魔法の練習を始めていく。初級魔法しか使えない花白に、かつて聖女が使っていた心悸聖狐という杖を与えて指導を受けると、高等魔法が使えるようになる。

 この世界には、こちらの世界に存在する食材は当たり前に存在するようだ。


 幕間、かつて聖女であり、優しさ故に「君臨する王族たちの怒りに触れ」「最終的に王に命じられた勇者」である弄月彩支に殺された元聖女の狼少女、彩雲時紫は転生して現在は時任有栖という義足の魔法使いとなっていて、義兄である弄月彩支からの手紙を読みながら紅茶とショートケーキを楽しんでいる。

 おそらく、彼女も異世界転生者なのだろう。この異世界に転生した後、また転生したということかしらん。


 後半、寝食をともにする二人は、豆とキャベツなどを煮込んだフランス版ポトフを食べ、花白の服を買いに出かける。肉まんの匂いが漂ってきた昼時、獣人をよく思っていない連中が襲ってきた。花白を気絶させてから、弄月彩支は連中を返り討ちにする。花白が目を覚ますまで肉まんを買って食べる。

 花白の分の肉まんを買ったはずである。

 でもこのあと、飲食店でハンバーガーを食べることとなる。そのとき肉まんはない。弄月彩支がひとりで食べてしまったのかもしれない。あるいは、家に帰ったら彼女にあげるつもりで、食べずに保管してある可能性もある。


 飲食店で目を冷ました花白は、弄月彩支が注文したハンバーガーを一口もらう。そのあと花白の分も注文。そのあと曾曾良という犬族の老人が話しかけられる。彼は王国の人らしく、獣人の権力を少しでもあげる視察をしているらしいと二人は考える。人と獣人との関係は少しずつ良くなっていこうとしていた。


 義妹だった元聖女の狼少女、彩雲時紫が「君臨する王族たちの怒りに触れ」たのは「聖女はとても優し」く、「癒しの力を使って世界を『治そう』とし」たため、「上に君臨する王族たちの怒りに触れ」討伐されたとある。

 ひょっとすると、獣人である狼少女だったことが、怒りに触れる要因にあったのかもしれない。

 いわゆる、獣人を快く思っていないため、王族たちの逆鱗に触れたのかもしれない。勇者である弄月彩支は、王族側に着いていたため、勅命ならば逆らえなかったのだろう。

 だから弄月彩支は英雄をやめ、獣人の孤児に手を差し伸ばすようになったのだ。一種の罪滅ぼしと、王族たちに復讐をしたいのかもしれない。

 かつてはそういう時代だったが、未だに根強く毛嫌いするものはいるけれども、いまは昔より獣人と人が仲良くなった世になったのだろう。それがせめての救いかもしれない。


 どうして現実世界の食べ物がでてくるのか?

 読者に興味を持ってもらうためはもちろん、既存のものを出したほうが、新しく考えるよりも楽だからという作り手側の事情もあるかもしれない。

 でもそうではなくて、彼らは異世界転生者だから、食べ慣れたものが恋しくて異世界でも作って食べるのだろう。外国へいったら、日本人は出汁の旨味である味噌汁が恋しくなるのと同じ気がした。

 料理の種類の多さが、それを物語っているのではないかしらん。


 

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