血には血を、機械少女には愛情を、
血には血を、機械少女には愛情を、
作者 御厨カイト
https://kakuyomu.jp/works/16816700427240217007
デレストリア王国の子供兵器、機械少女と呼ばれるミラ・シャーロットのおかげで連戦連勝してきたが、貴族に妬まれ処刑されそうになるところを属国に成り下がったデヴィリッシュ王国のクルーエル・アーフィリアン王子に救われ、愛を知っていく物語。
輸血するように機械少女に愛情を注ぎましょうということかしらん。
読んでみなければわからない。
文章の書き方については目をつむる。書き終わったものを一度音読して、おかしなところ、気になるところはないか確かめてみると、もっと良くなる気がする。
作者によれば、作者が推しているVTube久寝ねねこ氏から頂いた設定を元に書いた作品だという。
主人公は機械少女と呼ばれるミラ・シャーロット、一人称「私」で書かれた文体。自分語りで世界観を説明し、自身の遍歴を語っていく。
前半、主人公がいるデレストリア王国について語られている。
毎年、五歳を迎えた子供の半数を人体兵器の実験体として王国に差し出す義務がある。兵器となった子供のおかげで、何百年もデレストリア王国は戦争に負けていない。だが「一人の兵器で何千人も相手していたら流石にボロになってしまう」「ため、次回の戦争で使えるのはその中でもほんの数人」しかいない。残りは処分される。
半数は兵器義務の免除をされた貴族の子供なのだろうか。仮にそうだとすると、民はみんな兵器にされたあげく、数年で処分されてしまうわけだから、王国から民がいなくなってしまう。まさか、いなくなった国民を補うために他国と戦争して、属国となった国民の子供を兵器にするために徴収しているのではないだろうか。貴族だけ栄えて他の国民はいなくなったら、どうやって食料生産しているのだろう。経済が成り立たないどころか、王国を維持できるのかしらん。
貴族を省いた、王国民の半数の五歳児かもしれない。その半数を決めるのはどういう線引なのだろう。多くの国民は、他国へ逃げる気がする。
「普通戦場に出れるようになるのは六歳ぐらいになってから」だが、主人公は、六歳から戦場に立ち、「力を発揮して敵をどんどんと斬り倒し、終わっても『処分』」されなかった。十歳には王国の守護者となり讃えられるも、実験の結果感情が失われてしまっていた。「見た目の無機質さも絡めて」いつしか「人は『機械少女』を呼ぶ」ようになったという。
デレストリア王国と戦争をするときの兵士たちは、プリキュアが攻めてくる敵側の気持ちみたいなものかもしれない。まだ遊びたい盛りの年端も行かないような可愛い子どもたちが、圧倒的な戦闘力を振るいながら戦場を闊歩してくるのだ。傍観者ならいいかもしれないけれど、敵として対峙する当事者にはなりたくはない。嫌な現実である。
後半。十六歳の主人公にとって、戦いは作業だった。あるとき「男の首を刎ねようとした時」「命乞いをするわけでもなく、武器を抜くわけでもなく」「目の前にいる男」は「私の目をじっと見てい」たのだ。殺す気が失せ、刀をしまい立ち去ったことがあった。
のちに王子と再会して、それが愛だみたいなことが語られている。
はたして、彼女が「空中で止まっていた刀を仕舞い、その場を後にしようとくるりと背を向け」たのは、愛のせいだったのかしらん。「何か達観しているようなそんな目」をしていて、「何故か急に殺す気が失せてきた」という。
主人公は自身を、実験により「『感情』を失ってしまったようだ」と語っている。本人がそう思っているだけで、すべての感情をなくしたわけではなかったにちがいない。
王国では、連戦連勝する主人公をたたえて国王から褒美が与えられる。それを面白くないと思っていたのは、貴族連中だった。「暗黙のルールとして貴族の子供は」兵器として王国に出す義務が免除されていたため、プライドが高く、人を見下していたのだ。
それから五年後。二十一歳になっていた主人公は、何百回目の国王から褒美をもらうとき、クエトーレ・サルサンバトル卿が異を唱える。主人公が休憩している場面ばかりの写真を持ち出して、戦場で活躍していないと嘘をついて国王を騙し、主人公を処分させることとなった。
そんなとき、デヴィリッシュ王国のクルーエル・アーフィリアン王子が、どうせ処分するなら「私どもの国に引き取らせていただいてもよろしいですかな?」と申し出る。処分の手間が省けるからと承諾され、王子は主人公を馬車に乗せて帰国の途に就く。
デヴィリッシュ王国は戦力面で見ても勝ち目はなかった。
だから「王族の誰かが戦場で死ぬことでその後の降伏なんなりを相手のペースに乗らせないようにする」ための生贄として、クルーエル・アーフィリアン王子が選ばれたという。
王族が戦場で死んでも、戦場にのこのこ出てくるほうが悪いとなるのではないかしらん。相手の言いなりにならず、交渉するためだけに思いついた苦肉の策かもしれない。実際、彼は戦場では殺されなかった。ということは、デレストリア王国の言いなりとなって属国となったのだろう。きっと彼の王国も、国民の半数の五歳児をデレストリア王国に出しているのだろう。
生贄だったはずの王子は助かったとき、周囲の王族たちから咎められたり、役たたずと蔑まれたりしなかったのだろうか。
あるいは、生き延びたことで彼に転機が訪れたのかもしれない。
機械少女と呼ばれる主人公に会うために、喜んで属国となる道を取ったのかもしれない。その代償が、自国の民の五歳児半数を差し出すものだとしたら、彼の王国民は納得できたのかしらん。
王子は「普通なら死というものに恐怖するはずだが私はしなかった。不覚にも君のことを美しいと思った。この娘になら殺されてもいいのかもしれないと思った」ため、怯えも命乞いさえもしなかったという。彼にとって、一目惚れだったのだ。戦場という非日常で起きた、吊り橋効果みたいなものかもしれない。
とにかく、その姿を見て、主人公は殺す気が失せたのだ。
馬車の中で、いつぞや助けられた者だと語り、「君のことが好きだからだ。君にずっと私の隣にいて欲しい」と告げる。でも主人公は感情が乏しいので、愛や好きがわからないという。
王子は、「それなら私が教えてあげよう! 『好き』というのも『愛』というのも君に伝わるように。君が自分で想えるようになるように」と唇を重ね、馬車は走り去っていく。
読後、ひょっとしたら殺されず生き延びた王子は、主人公を迎え入れることを計画して、属国となる道を選んだのかもしれない。幸か不幸か機械少女を手に入れた王子は、デレストリア王国に反旗を翻すつもりかもしれない。
隣国諸国や属国となりながらもデヴィリッシュ王国に味方する他国と協力すれば、長きにわたる戦乱の世を終わらせられるかもしれない。
それはまた別の話だろう。
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