冒険のおわり
結果的に、お姫様の人を見る目は間違ってなかった。
皇帝に会ったお姫様は、まずガルド王国が自分を利用して不可侵条約を破ろうとしていた計画について話した。
そして自分はなんとか帝国につく前に逃げることができたのでとりあえずの計画は阻止できた。しかしこれからもガルド王国はテュルス帝国に攻め入ろうとするだろうから、ドラゴンウェポンを抑止力とすることで争いを防いでほしいと話すと、皇帝は、「おお、ではお前たちは我が国の恩人ではないか!苦労してここまで危険を知らせに来てくれたのだな。それもドラゴンまで手土産にして!……叶えられる範囲で望みを叶えよう。なんでも言ってくれ!」と目尻に涙を浮かべながら、なんて太っ腹なことを言い出したのだ。
その後お姫様は俺の身の上話をさも英雄譚のように語ってみせた。
お姫様の語る物語の中で、俺はなぜか幼少期に城を抜け出したお姫様と恋に落ち、将来を誓い合ったことにされていた。
ドラゴンを倒したのもお姫様と結ばれるためだったが、姫様から卑劣なガルド王国の上層部のことを知った俺は、「ともに逃げよう!」と強引にテュルス帝国へと彼女を引っ張ってきたらしい。
お姫様の壮大な作り話に皇帝はボロ泣きである。皇帝だけでなく隣に座っている奥さんやその子供もハンカチを目に当てていたし、周りからも鼻をすする音や嗚咽が聴こえてきた。
この国のお偉いさん達、騙されやすそうだけど大丈夫なんだろうかと俺は不安になった。
お姫様はうつむいて、すぐ隣に居た俺にしかわからないようにニヤリとあくどい笑みを浮かべた。
そして俺への宣言どおり、俺はドラゴンを倒しその素材により国に多大な貢献をしたとし、報奨金として金貨千枚と、領地を与えられた。ついでに爵位までもらった。
領地なんて大それたものじゃなくて、家族と一緒に暮らせる土地と家、そして不自由ない金があればよかったのだが……まあいいか。
お姫様の方は、本当になにも望まなかった。強いて言うなら、王女としての身分を捨てるので帝国への亡命を許してほしいと、ただそれだけしか。
「本当にそれだけでいいのか?」となにやら皇帝のほうが不満そうなのはなぜだろうか。
お姫様がなにかないの?というように俺のほうを見てきた。といっても、もう十分すぎるほど貰ったしなあと頭を捻ってると、ふと自分の履いている天翔の靴が目にとまった。ついでに、マルシェ王国の生き残りの話に涙を流したお姫様の顔を思い出す。
そして俺は皇帝に、できる限り丁寧な言葉を使って願いを告げた。
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