第1-5 誤算

パリンッ...

何かが割れるような音がした。と同時にプシュケが思念体の周りに集まり始めた。

思念体を喰らっているのだろうか?グチャグチャと音を立てながら喰らうプシュケを見ながら、咸月は先ほど見た桂木美琴の断末魔で気になっていることがあった。あの時桂木美琴は最期に何を言おうとしていたのか?

「あの、進藤さん」

「どうした?」進藤は応える。

「被疑者の件で...」と同時にプシュケが自分の周りに集まり始め、周りが光に包まれた。


バチッとした音が響き渡った。曇はばたりと倒れる男の姿を確認した。

「課長、犯人ばたりと倒れやしたぜ。やっこさんも無事そうっす」

「了解、そのまま人質救出してくれ」甘利は応える。

曇が部屋に入ろうとした瞬間、藤本康太郎は突然奇声をあげ始めた。

「ばかな!?」

「どうした曇!?」無線から甘利の叫ぶ声が聞こえる。

「やろう、興奮剤か何か打ってやがったのか!?。くそったれ!!」

曇は藤本康太郎を取り押さえ覆い被さった。すかさず他のメンバーも部屋に突撃し彼を取り押さえた。

「犯人確保!!、だがサイコープが正常に発動してない。課長急いで進藤に連絡を!!新人ちゃんが危険だ!!」曇は大声で甘利に伝えた。

「榊、聞こえるか!!」

「聞こえているわ、それにもうこちらも状況はわかっている。バンカーのしんちゃんがこっちの世界に引き戻されて紬ちゃんが戻ってきていないわ」

「奴が興奮剤を打っていたとは想定外だ、くそ!!」

「甘利課長、榊さん!!俺をドナーとしてもう一度彼女の所へ行かせてください」進藤は訊ねた。

「だめだ、危険だ!!お前は3年ほど前からもう力を失っていてダイブを行うにも命の危険があるのだぞ」

「そうよ、しんちゃん。危険だわ」榊も続けた。

「俺が彼女と連絡が絶える直前プシュケが彼女の周りに集まっていました。サイコープが不十分で本来ライフトレースを執行するはずのプシュケが彼女の周りにいたとなると、今彼女は被害者と加害者の記憶を絶え間なく体験させられている可能性があります。このままだと彼女の命が危ない。それにこの状況を打破するには俺がドナーとなって被害者と加害者のパスをつなぎ直すしかない」

甘利は一瞬躊躇った後、話を続けた。

「咸月を連れて必ず帰ってくるのだぞ。今回ばかりは失敗は許されない。わかったな」甘利は許可を下した。

「榊さん、サポート頼みます」

「わかったわ。必ず紬ちゃんを救って帰ってくるのよ。約束だからね」

「任せてください」

そう答えた後、進藤は桂木美琴と咸月の手を握った。

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