大福に恋をした少女

水素水

第1話 大福に恋をした少女

粉っぽくやわらかなあなたがあたしのくちびるをなでる。

ぷにゅりとたわむ弾力から、皮膚の奥にみっちりとつまったものがあることを予感させ、胸をこそばゆくさせる。

「だーめ、ぜったいに、だめだよ」

あたしは自分に言い聞かせる。

「だって、あたしはあなたが大好き。だから、大事にしたいんだ」


わかってはいても、あなたはあまりにも魅力的。


白くもっちりむっちりとしたエロティックな肌。

かすかにただよう小春日和を思わせるかおり。

ふれたときの甘美なやわらかさは言うにおよばず。


あなたのすべてが、あたしを狂わせるんだ。


だけど。

でも。

……なめるくらいなら、ゆるされるかなあ?

そろそろと舌であなたをたどる。

乳房を思わせるなだらかな曲線。

優しくしているつもりでも、ともすれば、あたしの欲望があなたの形を変えてしまう。


ああ。ああ。

そうっとあなたをくちびるではさむ。

あたしの形にあなたは代わり、あなたの皮膚がつううっと伸び、ぷちっと切れる。

ひとくち。

もうひとくち。


「うまっ、うまいうまい!」


あたしはあなたを食らう。

ハゲタカのように。ハイエナにように。


あなたの尊厳など無視して。

甘い。甘い甘い。甘さに溺れていく。

もはや欲望の奴隷です。

「もっと、もっとちょうだいいい!」

さらにひとくちをむしり取り、歓喜と悲哀の涙をこぼす。

 

そして、気がつけば、皿の上にはなにもない。

あなたは消えてしまった。

 


☆次回「排泄物に恋をした少女」に続きます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大福に恋をした少女 水素水 @chachamaru0128

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ