第11話 夜のピクニック


「―で、なんでクリスがいるんだ?」

ぼくちゃんは、クリスに聞く。クリスは何を言っているのか分からないというように首を傾げている。


「えー楽しそうだから!」

ニコニコと笑みを浮かべ、楽しそうである。


「クリスこれは遊びじゃないんだ。それに子供は寝る時間だろーって聞いてる⁉」

クリスはぼくちゃんの言葉を聞くことなく、ランチョンマットを敷き、お茶の用意をしている。完全にピクニック気分だ。

「これ、サンドイッチ!スワン兄様に作ってもらったの!」

とクリスは色とりどりのサンドイッチを見せてきた。

(おぉ、美味しそう!ツナに卵にポテトサラダって、スワン兄様止めてくれよ!!!)


なんだかんだ言って、1日中エルフの里を歩き回り情報を集めていたのでぼくちゃんたちはおなかペコペコだ。ぼくちゃんのお腹がグーと音がなってしまった。

ぼくちゃんは、クリスが持ってきてくれたサンドイッチでお腹を満たすことにした。


「お兄ちゃんたち早く食べるよ!」

クリスは嬉しそうに笑いながらこちらを見ている。


翔太はすでにサンドイッチを食べ始めている。ぼくちゃんは、サンドイッチを食べながら事件の事を考えていた。

今日収穫した情報は主に2つ、一つ目は夜に子供たちが攫われる事。二つ目が笛の音が聞こえてくることで大人にはその笛は聞こえないという事だ。

そう考えている時に、服を引っ張られた。下を見るとクリスがぼくちゃんの服の裾を引っ張っている。


「どうかしたのか?」

ぼくちゃんがクリスに聞いたが答えてくれない、顔を赤くして下を向いている。


「言ってくれないとわからないぞ」と話しかけると


小さな声で「おトイレに行きたい…」クリスは恥ずかしそうに答えた。


要するについてきて欲しいって事かというと小さくうなずいた。

ぼくちゃんは、クリスのトイレに途中までついていくことになった。

(面倒だな…)ぼくちゃんは、そう思ったがクリスが今にも泣きだしそうになっていたのでついていくことにした。


クリスは恥ずかしいのかそこで待っててとトイレから少し離れた場所にぼくちゃんを待機させた。


「ぼくちゃんは、ここで待ってるから」

「うん、待っててね!絶対いなくならないでね」

と念を押して、クリスは駆けていった。


なんだかんだ言っても夜は怖いのは、異世界でも変わらないんだなぁとぼくちゃんは思った。

異世界にも幽霊とかお化けとかいるのかな、クリスに聞いてみよう。

そんなことを考えていたが、しばらくしてもクリスが帰ってこない。

心配になったぼくちゃんは様子を見に行くことにした。


「おーい、クリス大丈夫か?」

トイレの入り口で声をかけたが、返ってきたのは沈黙。

「クリス入るぞ!」

トイレのドアを開けたが、そこにクリスの姿はなかった―


トイレの隅々まで探したが、クリスはどこにもいなかった。

急いで翔太のところに戻った。


「おい、翔太クリスは戻ってこなかったか?」

ぼくちゃんは、息を切らして翔太に質問した。


「クリスか?戻って来てないけど…どうした?」

翔太は状況を分かっていないので、ぼくちゃんの質問にキョトンとした顔で答えた。


「おい、翔太落ち着いて聞いてくれ…クリスが攫われたかもしれない。」

ぼくちゃんは、トイレで起きた状況を細かく説明した。


「マジかよ、それは相当やばいな…どうする一度見張りをやめて長老の家に相談しに行こう。」

翔太の意見に賛成し、ぼくちゃんたちは長老の家に向かった。


「とうとう、クリスまで攫われてしまったか」

長老は、悩ましい表情をしている。


「はい、ぼくちゃんたちが、ついていながら申し訳ありません」

ぼくちゃんは、長老に謝罪をした。部屋には、長老の他にスワンとスワンの部下の騎士団員が2名いた。


「てめー!!!クリスになにかあったらタダじゃすまねぇからな!!!」

鬼の形相のスワンがぼくちゃんの胸ぐらを掴む。

「ぐぅ」

大柄のスワンに胸ぐらを掴まれたぼくちゃんは軽々と宙に浮かび、苦しい声を上げた。


「やめんか、スワン。」

長老の静止の声がかかる。他の団員にも止められ、スワンはぼくちゃんから手を離した。

地面に座りこむ、ぼくちゃん。スワンの顔が見れない。


スワンも長老の言葉で落ち着きを取り戻したのか、一度深呼吸をしてぼくちゃんたちに質問してきた。


「すまない、取り乱してしまった。だが、クリスが攫われて一刻を争う状況だ、私が転生者様に改めてお願いがしたい!どうかクリスを助けてくれ…」


ぼくちゃんは、そのお願いにすぐに返事をすることが出来なかった。

昼間にあんなに泣きながら、里のだれにもお願いが出来ないからぼくちゃんを信用して頭を下げてまでお願いをしたスワンの気持ちを考えてら…


「クリスの事は申し訳なかった、今回はしっかりスワンさんの期待に応えられるようにしたい。一つ提案がある。」

翔太が自信満々の顔でスワンに言い放った。

ぼくちゃんからしたら、なんでそんなに自信があるのかわからなかった。


「ヒヒッ、すまないがクリスが身に着けていた衣類はないですか?」

翔太がそう言ったが、その場にいる誰も翔太が考えていることが分からなかった。


「クリスの衣服をどうするんだ翔太様?」

翔太の発言にクリスの兄であるスワンも首を傾げている。


「ヒヒッ、警察犬を使うんですよ。ちょうど、優秀な警察犬を呼んでいます」

そういうと、突如としてドアが開く、そこに立っていたのは清麻呂だった。


「デュフッ、諸君、待たせたな!!!やっと吾輩の出番だな」

ドアにもたれかかり、腕組みドヤ顔の清麻呂は、高らかに宣言した。





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