第9話 新たな事件

「スワン兄さま、今は私がお兄ちゃんに里の案内しているところです。邪魔しないでくださいませ!!!!」

クリスは鎧のエルフに向かって走って行ってポコポコと鎧を叩きあっかんべーして対抗している。

「すまない、クリス今転生者様たちに大事な話があるのだ分かってくれ。」

鎧のエルフは、クリスの頭を撫でてそう言った。

(ぼくちゃんたちに大事な話?…)ぼくちゃんは何のことかわからなかった。


「申し遅れました、私エルフ騎士団長スワンと申します。」

そう鎧のエルフが自己紹介しているが、その横でクリスはまだ駄々をこねている。


「分かりました。お話を聞きましょう。すまない、クリスそう言う事だからあとからまた里を案内してくれるか?。」

ぼくちゃんは、クリスにそう言いスワンの話を聞くことにした。

翔太の方を見たらうなずいている。


「ありがとうございます。お話する場所はここではなんですから、我が騎士団の拠点でいたします。私の後に付いてきてください。」

そう言いスワンは歩き出した。

クリスはふてくされていたが、何とかなだめぼくちゃんと翔太はスワンの後について騎士団の拠点に向かった。


騎士団は村のエルフの男性から、選ばれる。もちろんそれは、強制ではなく、自主性を重んじ志願した若者が騎士団に入団するわけだが、魔法を得意とするエルフで体力勝負の騎士団に入りたいという若者は珍しい。

騎士団長スワンも父親が騎士団だったため、入団したのだった。


騎士団の拠点は、一見他の家と変わらない大きさだ。功績をあげられていないのだから、当然のことだ。1階は、武器や鎧の保管庫になっていて、2階が来客用の部屋になっていた。

そこも、テーブルとソファが置かれた質素なものだった。


ぼくちゃんと翔太はスワンに案内され、ソファに腰を下ろす。

騎士団の隊員と思われるエルフがお茶を運んでくる。

ぼくちゃんは、お茶を口にしたが、恐ろしく味の薄い…。一口飲んでテーブルに置いた。

何のお茶かは、怖くてきくことが出来なかったが、翔太は黙ってそれを飲んでいる。


「で、話って何ですか?」

ぼくちゃんは、ひと息ついて、スワンに聞いた。


「実は、村の子供がさらわれる事件が多発してまして…」

スワンがそう話を切り出した。


「それは、どういうですか?」

ぼくちゃんは質問した。


「長老にモリーナの事は聞きましたか?」

スワンはそう返答した。


「はい聞きました。なぜ、村に入ることが出来ないのかについてです…」

ぼくちゃんはそう返答して察してしまった。

(なぜモリーナの話をする長老の話はモリーナがダークエルフだから村に入れないという事だけだ…もしかして、それの誘拐事件はモリーナのせいだと思っているのか)

ぼくちゃんは、怒りが込み上げてきた。


「ふざけるな…それはどういうことだ!」

翔太が飲んでいたお茶を机にたたきつけ叫んだ。


「すみません。お察しの通りエルフたちはダークエルフであるモリーナを疑っているんです。だからこそあなたたちに相談したのです…」

スワンがそうぼくちゃんたちに頭を下げた。

ぼくちゃんはどうしてスワンが頭を下げたのかわからなかった…


「どうか、私の妹モリーナを助けてください!お願いです。モリーナと少しの間でも一緒にいたあなた達しか頼めないのです。」

スワンはプライドを捨ててぼくちゃんにお願いしいるのが伝わってくる。

しかし、それよりも気になったことがあった。


「えっ、モリーナが妹って言いました?」

ぼくちゃんは、スワンの言ったことを再度、確認した。


「はい、モリーナは私の妹でクリスの姉にあたります。もっとも、クリスが生まれる前に村から追い出されてしまったため、クリスはモリーナのことを知りませんが・・・」


「でも、どうすれば・・・」

スワンはぼくちゃんに助けを求めてきたが、どうすればいいのか分からなかった。

疑いをかけられたモリーナのことを救うにはどうすれば―



すると、翔太が口を開いた―

「ヒヒッ、我々で子供さらいの真犯人を探し出せば、いいのですね」

驚いて、スワンとぼくちゃんは翔太を見た。


「ヒヒッ、そうとなったら、行きますよワトソン君」

翔太は楽しそうに笑った。ゲーム感覚なのだろうか、異世界に来て感じてはいたが、

翔太は物事を冷静に分析する力に長けている。


「だれが、ワトソンだ!それに、行くってどこに?」

ぼくちゃんは、翔太にツッコミを入れながら、聞いた。


「ヒヒッ、察しが悪いですなぁワトソン君。捜査の最初は聞き込みって相場がきまってるだろ」


こうして、ぼくちゃんと翔太は、モリーナの疑いを晴らすべく、村で聞き込みをすることになった。


ぼくちゃんは、スワンにお礼をして騎士団の拠点を後にした。

スワンはとても感謝していた。ぼくちゃん達に何度もお礼を言って涙を流しながら頭を下げていた。

ぼくちゃん達はスワンと別れ、真犯人を探すため先ほどの広場に戻ってきた。

翔太を見ると、楽しそうな顔をして今後どう子供を誘拐した真犯人を追い詰めるか考えているみたいだ。


「真犯人よ待ってろ!エルフの里の地図はすべてこの頭の中にある。どこに逃げても私からは逃げられないのだよ…ヒヒッ」

翔太はそうつぶやいている。


しかし―捜査は難航した。

理由は、子供が攫われる所を誰も見てないということが原因である。

スワンの話によれば、子供が失踪し始めたのは、1ヶ月前のからで15人の男女が突如として、姿を消した。

1ヶ月で15人、決して少なくない人数だ。それなのに、誰も攫われた所を見ていない。まさに、煙のように姿を消したと言える。


「魔法が使えるなんでもありの異世界だ。そういった魔法もあるんじゃないか?」

ぼくちゃんは、翔太に聞いた。


「ヒヒッ、そんなことを言っていたら、いつまでも解決しませんよ。まぁ、魔法の線も残しつつ、情報を集めましょうや」


翔太とぼくちゃんは子供が攫われた家に絞り、聞き込みをすることにした。







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