第8話 ダークエルフの過去
「モリーナが村に入れないってどういうこと・・・?」
ぼくちゃんは長老に聞いた。
「モリーナはダークエルフで忌み子だからじゃ」
長老は淡々とぼくちゃんに説明した。
かつて、エルフの村に肌の黒いエルフ(ダークエルフ)の子供が誕生した。500年も昔のことだ。
村人は、はじめは肌の違うエルフの子供は面妙でどうするか、話し合ったが母親の説得もあり、村で大事に育てることにした。
ダークエルフの子供は、他のエルフの子供と変わらず成長し、大人になった。
結婚もし、子宝にも恵まれた。どこにでもある平穏な日々。
しかし、可笑しくなった。狂ってしまった。
原因は分からなかった―
村の子供が突然消えるという事件が頻繁に起きるようになった。
私たちエルフには、なぜ消えたのかわからなかった。何度調べても真相にたどり着けない。事件は迷宮入りしていたんだ。
そんな事件は、50年近く続いたが解決できなかった。
ある日、この近くの街に現れた転生者がこの子供が消える事件を解決した。
真相はダークエルフは子供をさらって食糧としていた、だからダークエルフが今度もし生まれてきたら村から追い出そうと転生者様と里で決めたのだ。
ぼくちゃんは長老の話に聞き入ってしまった。
「そんな事件の後、モリーナが生まれたのか・・・?」
翔太がつぶやいた。
長老は話を続けた、そしてそれは90年前ある騎士の家系にダークエルフが生まれたのだ…それがモリーナだ。
父親と兄がいたが里のしきたりに沿ってダークエルフのモリーナを里ではなく森の奥にひそかに住まわせることにしたのだ。
「モリーナはそんなこと一言も言ってなかった…」
ぼくちゃんたちはモリーナの事を全然知らなかった。
モリーナはダークエルフというだけで、追放されたのか?
何も悪いことしていないのに、肌の色が違うというだけで、村の世界に追放されたのか。
そんなのは、あんまりだ。救いようがない―
ぼくちゃんは、行き場のない怒りと虚無感を抱いた。いまにも長老につかみかかりそうだ。しかし、そんなことをしても意味のないことなど、分かり切っていた。
「ヒヒッ、モリーナが村のみんなとうまくやる方法はないのか」
翔太が長老に聞いた。
「別に村の者たちは、モリーナを嫌っているわけではない。ただ、怖いんじゃ。いつか、モリーナが気が狂い、村のエルフを襲ってしまうと…」
そう長老が説明を始めると…誰かがすごい勢いで扉を開けて入ってきた。
「モリーナ殿は…ここにいるデゥフか?」
そこには清麻呂が足に包帯を巻いて足を引きずって辛そうな顔をして立っていた。
「清麻呂生きていたか。悪運の強い奴だ。切り落とさずに済んだかヒヒッ!」
翔太が少しうれしそうにつぶやいている。
ぼくちゃんも嬉しくて話しかけようとしたとき、ものすごい焦った顔をして後ろから救護班のエルフが走ってやってきて言った。
「転生者様、絶対安静です。あの毒からこの半日で起き上がり歩けるだけでも物凄いのに…早く医務室に戻ってきてください。」
そう言って救護班のエルフは清麻呂を連れて行こうとしている。
「だ…だめデゥフ…」
そう言っていたが、案の定救護班エルフに連れていかれれしまった。
ぼくちゃんは、清麻呂の元気な姿を見て、安堵したが、モリーナのことが気掛かりだ。
しかし、今すぐその問題を解決出来そうにない。それだけ、エルフとダークエルフの間には、深い溝があるのだった。
長老の勧めもあり、村を探索することになった。
案内は、先ほどの小さなエルフ。名前は、クリスフィーア。
「みんなからは、クリスって呼ばれてるんだよ!お兄ちゃん」
クリスは、得意げに言った。
「クリスお兄ちゃんって、呼び方やめてくれないか?きみはぼくちゃんより、年上なんだから」
クリスは、白髪ツインテールで10歳くらいの幼い見た目をしているが、ぼくちゃんの倍の年月を生きているらしい。
清麻呂が聞いたら、「合法ロリーーーーー!!!デゥ、デゥフフフフ!!!!」とか発狂しそうだ。
「だ…だめなの?お兄ちゃん…」
クリスは、ぼくちゃんの提案をきいて、瞳に涙をため、ぷるぷると肩を震わした。
絵面を見たら、ヤバい!完全に事案だ。
「分かったから…そう呼んでいいから…」
ぼくちゃんは、ため息をつきクリスの頭を撫でながらなだめる。
頭を撫でられクリスは元気を取り戻し、お兄ちゃんとつぶやきながら楽しそうに里の案内してくれた。
ぼくちゃんは、初めて異世界の里を見て感動している。
東京のようにビルや電車、高速道路などの建造物が一切なくものすごく安心できる。
ぼくちゃんは、田舎に行ったことはなかった。
クリスが里の案内を楽しそうにしてくれている。武器や薬屋、雑貨屋など転生者がこれから必要になってきそうな道具が置いてある店から案内してくれている。
それにしても平和だ、先ほどのエルフとの闘いが嘘のようだ。
クリスは一つ一つ丁寧に里を案内してくれている中、ぼくちゃんはモリーナの事で頭がいっぱいだった。
「お兄ちゃん…?聞いてました?」
不意にクリスが言った。
「えっ?聞いてた聞いてた。で、スク水がなんだって?」
咄嗟のことで、ぼくちゃんは、よくわからない誤魔化し方をした。
「全然、聞いてないじゃない!てゆうか、スク水ってなに?」
ぷんと、頬を膨らませクリスは怒った。
「ヒヒッ、スク水は我々の世界では、高級食材でしてね。たいそうな値段で取引されている代物なのですよ」
おいおい、翔太。いたいけな少女に嘘を教えるんじゃないよ。
「それ、おいしいの?ね、どんな味?どんな味?」
クリスは食べ物と聞いて、目を輝かせた。こちらが、異世界に興味を持つように、クリス達エルフもぼくちゃんたちのいた世界に興味があるのだろう。
「ヒヒッ、それはもう、最高に甘い味のするものですよ」
翔太の嘘はどんどんエスカレートしていく。甘いものと聞いて、さらに目を輝かせるクリス。自分が騙されているとは、1ミリも考えていないのだろう…なんだか可哀そうになってきた。
「翔太、あんまりクリスをいじめるのは、やめろ。スク水は食べ物じゃない衣類だ!」
ぼくちゃんは、翔太に説教をし、クリスに真実を伝える。
「ヒヒッ、あなたの中では衣類でも、我の中では食べ物なのですよ。常識を疑いましょ」
翔太は決め顔で言った。なに堂々と変態宣言しているんだよ。
(カッコよくねーよ!…)
クリスはぼくちゃんが説明した内容ではあまり理解できていないみたいだった。
ぼくちゃんたちからしたら、願ったりかなったりだ。
その時だった、後ろから誰かに話しかけられた。
「転生者様、お忙しいところ恐縮ですがお話したいことがございます。」
ぼくちゃんが後ろを振り向いたら、門の上から見ていた鎧のエルフが立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます