第7話 ついにエルフの里へ

「ここがエルフの里の入り口か…すごい大きさだ」

ぼくちゃんはすごい佇まいの門を見て感心してしまっていた。

それよりも関心することがある。翔太の隠されていた能力だ。


体力が少なくなったぼくちゃんをここまで矢に一本も当てずに誘導した。

魔法陣があるはるか後ろを見ると、翔太がこちらに向けてグッドサインを出して笑顔でこちらを見ている。

ぼくちゃんも翔太にグッドサインを返した。

モリーナは、清麻呂を抱えてぼくちゃんを心配そうな目で見ている。

清麻呂はまだ気絶しているみたいだ。


(このままでと清麻呂の足も時間がたちすぎて切り落とさなくてはならなくなる…)

ぼくちゃんは、そう考え立ち上がり門の下で叫んだ


「ぼくちゃんはーーーオークではない!!!!!!!!」


ぼくちゃんの声が聞こえたのか、矢の雨が少しやんだ。

そして門の上から鎧を着たエルフが顔をのぞかせた。


そのエルフは、モリーナに引けを取らない美青年だった。

(エルフってやっぱり、みんな美形なんだな…)

ぼくちゃんは、感心していた。ただ、モリーナと違う点は、肌の色である。

モリーナが褐色の肌なのに対し、このエルフは恐ろしく肌が白いのだ。

よく、雪のように白い肌と陳腐な表現をされるが、まさにそれだった。


「攻撃止め―」

鎧を着たエルフは叫び、その指示で矢の雨は止まった。

コツコツと階段を下りる音、鎧が擦れる音が聞こえた。

近づいて、来ているのだろう―

ぼくちゃんは、身構える。そして、門の扉が開いた―


「もしや、あなたは転生者様ですか?」

ぼくちゃんを見た鎧のエルフは唐突に質問してきた。


「さっきから、そういってるでしょ!」

ぼくちゃんは、苛立ちながら、説明した。


「転生したのはぼくちゃんだけでなく、後ろの2人もなんです!」

ぼくちゃんは、そう言い魔方陣の中にいる清麻呂と翔太の事を指さした。

そしたら鎧のエルフは、不思議そうな顔で質問してきた。


「あの…非常に言いにくいのですが、転生者様は5人組ではないのでしょうか?

私共の里に言い伝えたられたのは数百年に一度、5人組の守護者が異世界より現われるというものなのですが…」


他の2名はどうした?数が合わないではないか、そう言いたげである。

まだ、ぼくたちのことを信用しきれてない様子だ。


「女神ラプスの手違いで3人で転生させられたんだ」


鎧のエルフは顎を手でさすりながら、つぶやいた。

「なるほど、女神ラプスが確かにあの女神なら、やりかねないが…」

いかにも、言葉を含んだ言い方だった。なにか、身に覚えでもあるのだろう。


すると、杖をついた年老いたエルフが、悩んでいる鎧のエルフの肩を叩いた。

「スワン、先ほどから見ていたが、この者たちからは敵意が感じられない」


「しかし、長老!得体もしれない者たちを村に入れるわけには…」

歯向かうスワンの膝小僧を長老は持っていた杖で、殴った。

痛みで、うずくまるスワン。

長老は、つづけて「先ほどの魔法『パラソル・フラワー』はモリーナの魔法じゃろ。つまり、モリーナの客人じゃ」と言う。


はっと、自分が勘違いをしていたことに気付くスワン。


「大変申し訳ございません…私としたことがモリーナの魔法を見落とすなんて…」

スワンが長老に謝る。長老はわかったら良いと言わんばかりの顔をしている。


2人にやり取りを見ていたぼくちゃんは、今の状況を思い出した。


「それどころじゃないんです…ぼくちゃんと一緒に転生させられた仲間の足に矢が刺さって足が大変なんです!!!!モリーナが手当てしてくれてるけど、毒がどうとかって…お願いします助けてください。」


ぼくちゃんは、長老に一生懸命にお願いした。

長老は、スワンに指示を出している。スワンが医療班を呼びに門の奥に駆け出した。


「転生者様、もう大丈夫ですぞ…怪我をされた転生者様も里で一番の医療班が向かいますので安心してくだされ。」

長老がぼくちゃんに話かけてきてくださっている。

ぼくちゃんは、医療班が清麻呂に向かっていることを知り安心した。

安心したら急に眠くなってきた。

(魔法陣から門まで全力で来たから体力もないからな…)

瞼が重い、ぼくちゃんはその場に倒れこみ気絶してしまった。


目覚めたら、そこは知らない部屋の天井だった。

(どこだ?ここ。それになんか体が重い・・・)


「あっ、目覚めた!おにいちゃんおはよう!!!」

知らないエルフの10歳くらいの小さな女の子がぼくちゃんのお腹の上に乗り、ニカッと笑った。


「えーと、きみはだれ?たしか、ぼくちゃんはエルフの里の前で倒れて・・・」

ぼくちゃんは、状況を整理していた。モリーナに案内されて、エルフの里にむかったこと、そこでエルフたちと戦闘になったこと、清麻呂が足に矢を受けたこと―


「そうだ!清麻呂。清麻呂はどうなった?」

ぼくちゃんは、清麻呂のことを思い出し、飛び起きた。

ぼくちゃんのお腹に乗っていたエルフの少女は「キャッ」と弾き飛ばされた。

「イタタタタ」

少女は床に投げ出され、頭を打ったのか、頭を押さえている。


「ヒヒッ、清麻呂なら無事だよ。いま、医療班の所で毒を抜いてもらっていますから、数日はベットの上でしょうけど」


「翔太!おまえ、無事だったのか」

ぼくちゃんは、清麻呂と翔太が無事だったことに安堵した。


「おにいちゃん嫌い!!!」

ぼくちゃんのお腹に乗っていたエルフの少女は、転がっていた床から起き上がり頭を押さえ出て行ってしまった。


「あぁぁ、清麻呂がいたら殺されていますぞ!ヒヒッ」

翔太が馬鹿にしたようにぼくちゃんを見て笑った。

翔太と話をしていると、扉が開いてエルフの長老が入ってきた。


「転生者様、具合はいかかがでしょうか?」

長老がニコニコしながら入ってきた。その後ろには先ほどの少女がいてこちらを睨んでいる。


「何とか大丈夫です!助けてくださりありがとうございます。清麻呂…仲間のことも助けていただきありがとうございます。」

ぼくちゃんは長老にお礼を言った。


長老はニコニコ笑いながら「当たり前の事をしたまでです。」といった。

ぼくちゃんは、モリーナの事を思い出し長老に質問した。


「あのぉ…清麻呂と一緒にいた褐色のエルフの少女はどこに行きましたか?」

長老は困った顔をしてこう言い放った…


「モリーナはエルフの里には入れないのだ…」












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