第4話 吾輩はオークではないデゥフ!

少女は金髪をなびかせながら、メモを取り、独り言をつぶやいている。

「う~ん、火力がいまいちだなぁ改善の余地ありっと」


(今の攻撃がいまいち?もしかして、俺らってこの世界でめちゃくちゃ弱い―)


そう考えていると、生き残っていた犬の化け物が少女の首元に飛び掛かった。

「あぶなっ」

そう叫ぼうとしたが、声が出ない。少女は犬の化け物の存在に気づいていない。

少女を助けようとぼくちゃんは走り出した。


すると、右の奥から砂煙が上がりすごい勢いでぼくちゃんの横を誰かが通り過ぎた。


「ウォー  吾輩の嫁に手を出すな!デゥフ」

気持ち悪い悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。


「清麻呂?」

ぼくちゃんは少女を助けようと走り出したことも忘れ、その場に立ち尽くしてしまった。

それは、オークたちに衣服を破かれ、ほぼ裸状態の清麻呂だった。


「トォウ!!!」

掛け声と共に飛び上がった清麻呂は、宙を一回転し、犬の化け物めがけチョップを繰り出した。


「キャイン」という声と共に犬の化け物は、絶命した。


「ふぅ、またつまらぬものを切ってしまった」


(いや、切れてはねぇよ―)

それにしても、オークに追われている時から感じてはいたが、清麻呂は意外と身体能力が高い。


ぼくちゃんは開いた口が塞がらない…

(清麻呂を助けにオークの群れや他にモンスターがいる危険な場所に翔太と飛び込んだのに…)

そう思っていると金髪の少女が清麻呂のことを見て


「まだ、殺し損ねたオークがいたか…」

少女は、清麻呂にそう言い放つと容赦なく手のひらから清麻呂に向け、雷撃を放った。


「ら、らめぇぇぇぇ~デゥフ」

清麻呂は煙を口から出しながらその場に倒れた。


「清麻呂ーーーーーーーーー!!!」

ぼくちゃんは急いで清麻呂の元に走り出した。


「あら、ゴブリンもいたのね」

金髪の少女は、今度はぼくちゃんに向け、雷撃を放つ。

寸での所で、雷撃を躱し、金髪の少女の懐に入った。


今なら、こぶしが届く距離だ。

ぼくちゃんは、こぶしを握り締めた。

やらなければ、殺される。しかし―


この金髪の少女を傷つけて良いのだろうか。

国宝級の容姿を持つ少女の顔に傷をつけることは、国家の損失。

また、ぼくちゃんのポリシーに反する。


(やっぱ、むりっ!!!)

ぼくちゃんは、握り締めたこぶしを緩めた。

しかし、勢いを緩めることは、出来ず、少女を押し倒した。


「い...いった」

気が付くと手に柔らかい感触があった……


「ラッキースケベ発動ですな、ヒヒッ…まぁギャルゲーには必要なイベントです」

いつの間にか翔太が後ろに立っている。


「これは違うんだ…」

ぼくちゃんは慌ててその柔らかいものから手を離した。


翔太に懸命に誤解を解こうとしていると、後ろから物凄い殺気を感じた。

少女のものではない…


「清麻呂か?!!」


ぼくちゃんは恐る恐る後ろを振り向いた。

そこには、オークの群れに襲われほぼ裸状態でさらに少女の雷撃により黒焦げで口から煙が出ている清麻呂が立っていた。

その姿は、まるで悪魔そのものだった。


「いま、流星殿何をした デゥフかははははあっははhhhhh?」

物凄い威圧を感じる。

ぼくちゃんは死を覚悟した。その時・・・


「イッた、たたた…」

少女が起き上がりながら声をもらした。


「え、えっ?」

少女が目覚めて、最初に見たのは黒く焦げた裸のメガネデブだった。

次に猫背の細長いガリ男、そして、背の低い男。


「あなたたちは、誰?」

少女は、聞いてきた。どうやら、記憶が混在しているようだった。


「ヒヒ、あなたが魔物にやられそうになっていたのを、我々が助けたのですよ」

翔太が少女に説明した。


(いや助けられた、方だろうが!!!)ぼくちゃんは心の中でつぶやいた。

翔太はニヤニヤしながらこちらを見いてきた。


「そうだったかしら…なんか記憶が混乱しているわ?」

少女は、何が起こったか思い出そうとするように頭を抱えている。


すると、黒焦げになった清麻呂が少女に近づいてこう言い放った。


「デゥフ~キミ、吾輩のヒロインになってくれないか!」


「ヒロイン?なにそれ」


「つ、つまり吾輩と付き合ってくれデゥフ」


そこから、清麻呂は少女に熱烈なアプローチがはじまった。

少女は、美少女アニメの素晴らしさ、魔法少女についてなど、支離滅裂な演説をおよそ2時間、聞かされたのだった。


ぼくちゃんは何度も清麻呂の説明を止めようと思ったが、清麻呂の人を殺すような目で睨まれ畏縮してしまい何も言葉に出来なかった。


しかし、その長たらしい説明に終止符を打ったのが翔太の一言だった。


「おいメガネデブ、説明が長すぎるぞ!もっと簡潔に説明しろよ。

あと、女性にそのような説明をしても嫌われるだけだぞ…ヒヒ」


「何デゥフ?喧嘩売ってるデゥフ?」


清麻呂は自分の話を遮られ、睨見ながら翔太に近づいてくる。


(クッ!なんで、こいつらすぐに喧嘩を始めようとするんだ?協調性ってやつはないのか…)

どうにか、清麻呂と翔太の喧嘩を止める方法を考えた。

なるべく、誰も傷つかないように、誰も損をしないようにと。


(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ!!!閃いた!!!)


ぼくちゃんは、少女に近づいて言い放った。

「キミは、ぼくちゃんたちが助けた。つまり、命の恩人だ。そうだろ?」


「ええ、あなたたちがいなかったら、どうなっていたか…」

少女は俯きながら、答えた。


「1番この場で傷つき、みじめな思いをしているのは誰か、分かるか?」


「えっ?」

少女は、ぼくちゃんが何を言いたいのか分からないといった様子である。


その少女をみながら、続けた―

「それは、ここにいる清麻呂だ。一番傷つき、裸同然の恰好をしている。違うか?」


「ヒヒ、流星なにを言っているんだ?」

翔太も聞いてきたが、無視して続ける。


「この裸の男にしてやれることは、少ないだろう。例えば、キミの服を彼に差し出すとか・・・?」


「わ、わたしに裸になれというの⁉」

ぼくちゃんの発言に少女は動揺した。


「いや、ぼくらもそこまで鬼畜ではない!そうだな…きみの着ているそのマントで手を打とう」


「えっ?これはおじいさまからもらった大切なもので、あの・・・」


少女は、考えた―

得体の知れない男が3人。恰好からして、たぶんこの世界の人間では、ない。

たぶん、転生者に違いない。

転生者は、世界を変えるほどの異能力を扱うと聞く。

逆らった自分もどうなってしまうか―


「わかりました!!!マントは差し上げます。だから、どうか許して―」


少女のマントをもらった清麻呂は大はしゃぎで踊っている。

サイズが合っていないため、動くたびにミシミシと音をたてる。


「あ、あぁ・・・」

少女はその姿を見て、放心状態。


「し、締め付けられますぞーーーーーデュフ!キモチイィィィィ」











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