第2話 砂漠ってちょっとハードモードすぎませんかね
目覚めたら、そこは砂漠だった。
女神ウプスによって、穴に落とされ、気づけば当たり一面の砂の海。
地平線の先まで砂!
転生ものっていったら、はじめは街とかに転生するのが普通じゃないのか?
いきなり、砂漠ってちょっとハードモードすぎませんかね。
周りを見渡すと近くには、丸いメガネが落ちている。
(なんだこのメガネは…)
そういえば、ぼくちゃん以外にも2人が一緒に落ちたことを思い出した。
「相棒がいないデゥフ~」
ミミズが背中を這うような気持ち悪い声が聞こえてきた。
ぼくちゃんが振り返ると、肉の塊が地面を這いつくばっていた。
汗で全身に砂が張り付き、まるで砂のモンスターのようだ。
「あの、これはきみの?」
ぼくちゃんは落ちていた眼鏡を差し出した。
「あっ!ど、どうもデゥフ~。これがないと、何も見えな・・・って誰⁉」
ぼくちゃんが拾って渡したメガネをかけた砂まみれのデブが話しかけてきた…
「ど…どうも。ちなみにきみは?」
ぼくちゃんは急に話しかけれ、変に緊張して質問を質問で返してしまった。
「ど、どうもデゥフ~。吾輩デゥフか? 吾輩は池田清麻呂デゥフ⁉」
(自分のことを吾輩だなんて、気持ち悪いなんだこのメガネは…)
ぼくちゃんは質問したことを後悔した…
「ぼくちゃんは、川又流星だ。ところで、清麻呂はここがどこか知ってるか?」
「ぼくちゃんってデュフwwめっちゃおもしろデュフ~」
「一人称が吾輩の奴にいわれたくねーよ!猫、吾輩は猫なのか?」
ぼくちゃんは、一人称をバカにされたことに珍しく怒ってしまった。
容姿をバカにされようと、低い身長をバカにされようと構わない。
でも、ぼくちゃん呼びをバカにすることだけは、許せなかった。
それは、あの人をバカにされているみたいで、嫌だったからだ。
「五月蠅い ヒヒ…」
奥のほうから独り言のような聞こえるか聞こえないかの大きさの声が聞こえた。
ぼくちゃんが後ろを振り返ると、ガリガリで猫背の奴が立っていた。
デブの清麻呂には声が聞こえていないようだ…
「ぼくちゃんってデュフwwデュフwwデュフww」まだ清麻呂は笑っている。
ぼくちゃんはデブの清麻呂のことを無視してガリガリで猫背に話しかけた。
「きみは?」
「中野翔太」
翔太は、ぼくちゃんに聞こえるか、聞こえないかの小さい声で答えた。
「ぼくちゃんは、川又流星。翔太はここがどこか知っているか?」
「分かるわけないだろ…きみは馬鹿なのか?そんなことも考えられないのか。」
翔太は小さい声で答えた。
(ま~そうだよな…一言余計だが)ぼくちゃんも翔太の答えに納得した。
これからどうしようか考えていたら、気持ちの悪い声が聞こえた。
「そいつ誰デゥフ?」
さっきまで砂の上を転げて笑っていた、デブの清麻呂が話しかけてきた。
「また面倒なのが増えたか…」翔太がつぶやいた。
「はっ⁉なんかいったデュフ!」
翔太の小さな声を聞き取った、清麻呂が突っかかる。
乱闘でも起こるんじゃないかと思った、ぼくちゃんは合わってて、2人の間に仲裁に入った。
「と、とりあえず、ここがどこなのか誰も分からない。しかし、あの女神ラプスがいうに異世界で砂漠の真ん中だ。ここで、じっとしてても、しょうがないんじゃないか?」
清麻呂は翔太のことを睨んでいたが、ぼくちゃんの考えを聞いて目の色が変わった。
「はっ⁉そうか!吾輩はついに異世界に来たデゥフ」
清麻呂は翔太に突っかかっていたことも忘れ、はしゃいで砂の上を走り回っている。
「ヒヒ、女神がそう言っていただろ…ここには馬鹿しかいないな」
呆れたように翔太がつぶやいた。
その声は清麻呂には聞こえていないようだ。清麻呂は放牧された豚のように砂漠を走り回っている。
「異世界!なんて甘美な響きデュフ。そうだ魔法デュフ」
清麻呂は、思い出したように、変な動きと共に詠唱を始めた。
「偉大なる火の精霊イフリートよ!吾輩に力を授け、大地を焼き払わん」
『ファイヤーボール!!!』
清麻呂は、決めポーズと共にビシッと手を突き出した。
しかし、その手の平からは、何も出なかった……
「あれ、なんで出ない?ポーズがダメなのか」
清麻呂は、夢中で何度も技を繰り返した。しかし、何度やっても砂漠に虚しい声が響くだけだった。
「ヒヒッ...馬鹿はほっといて先に行きましょうや」
「そうだな」
ぼくちゃんは、翔太と共に清麻呂を置いて、歩みを進めた。
翔太としばらく歩いると奇妙な悲鳴が聞こえてきた。
清麻呂の声だ。
(相変わらず気持ち悪い声だな…)と思いながらぼくちゃんは声のする方を振り向いた。
清麻呂が砂まみれの顔に鼻水と涙をすすりながらものすごい顔で走ってくる。
まるで何かに追われているように…
「これぞ、ハァハァ、これぞ、ハァ異世界デゥフ」
そんなことをを叫びながらこちらに走ってくる。
最初は、清麻呂が分裂し、こちらに向かって来ているのだと、錯覚した。
しかし、清麻呂が近づくにつれ何かに追われているのがはっきり分かった。
それは、『オーク』の群れだった。
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