第1章 オルガ~海の一族

「2人とも、もういいだろ。そのへんにしとけ」


砂煙の中から誰かが喋った。


煙から人影が少し見えると、オルガは少し口惜しそうにした。


「兄いか?」


「十分わかったろ。これ以上いくと両方怪我するぞ」


顔にあざのある男が立っていた。その男はオルガと遜色ない体格、そして彼以上の威圧感が漂っている。


「ふー、しゃねえか。お前もそれでいいか。」


「ああ。それより、あんたは誰だ?」


「こいつの兄貴分だ。悪かったなわざわざ殴り合わなくてもよかったろうに」


「いや。こんなに強いやつが仲間になってくれるってわかってよかったよ」


「はは、お前も見どころがありそうだな。おれの名はダンカ-ク。お前は?」


「ウェイド・ジルラーダ」


「そうか。よろしくなウェイド。こいつも頑固なとこがあるがいいやつだ、よろしく頼む。」


「はい。」


「後ろの君たちもよろしく。」


ブロウとアルフレードにも名を聞き力強く握手していく。


「よお、腹減ったしどうせならうちこねえか?この森はうまいもんだらけだぞ。ごちそうしてやる」


「おお、いいねえ食おうぜ」


「ダメだ」


ブロウがノリノリで行こうとしたがアルフレードが遮った。


「悪いな。ゆっくりしたいんだがこの旅はできるだけ早く終わらせるように言われてるんだ。」


「うそだろ?なんでだよ」


オルガが食事も用意してあったのもあり、焦って聞き返す。


「言い伝えにある通り、今は3つの一族の同盟を早く結びたいんだ」


「ああ。なるほど」


「せっかちなやつらだ。だがちょっと待て。お前らのために飯の準備をしてたんだ。持ってけるもんはもってきな。」


「ちょっととってくらー」




「ははっ、あいつこの日を待ちわびてたからなー」


「え?」


「あいつは、この森の外に出てみてえてよくいってたんだ。この機会にでれる可能性があるから楽しみにしてたんだ」


「へえ」


「あと、外にも強そうなやつがいてるていうのが確認できてうれしいってのもあるんだろうな」


「あいつは、ここで何番目に強いんだ?」


「んー、現時点で5番以内は確実だな」


「そのなかにもちろんあんたもはいってんだろ?」


「ああ」


「やっぱりそうか。」


「ああ、だがいずれは、あいつがトップに立つ。」


「がははっ、あんたを超えねえと行かねえのかよ。大変だなあいつも」


ダンカ-クと談笑していると、大量の食糧を抱えてオルガが帰ってきた


「おーい持ってきたぞ」




「ありがとう。」


「ちょっと多くねえか」


「おいおい、用意してた分の十分の一もねえよ。もってけ、もってけ」




「お、おう」




3人に大きな布をわたし大量の食料を抱えさせ満足そうな顔をしながら


「よし。いってこい。終わったら今度は三種族でだな」


「おう、ばっちり決めてやるよ」




ダンカーク、オルガと別れると三人は海へと向かった。


荒野を駆ける3人。森から海へにかけての道のりは平坦で、植物もひざ丈がほとんどでところどころに湖がある。走ることが得意な種族、競うようにあっという間にたどり着いた。


「見えてきた。」


「あれが海か、でけえな」


「こんなにでかいとどこに住んでるかわからねえだろ」


ウェイドが苦笑いしていると、アルフレードが目を細め遠くを見ている


「あれ、島じゃねえか?」


「ん?あ、あの豆粒みたいのか。」


「よくみつけたな」


「よし。いくか」


「まじか、ブロウ。」


「びびってんのか?こんなの湖とかわらんだろ。ちょちょっと泳げばつく」


「ま、それしか方法がないか」


3人は荷物を置き、わずかに見える島に向かい泳ぎ始めた。


(湖ですらやっかいなやつがいるのに、こんなとこ泳いでも大丈夫かよ。下から化けものにくわれそうだな)


なわばり外には、化け物が住んでいると聞かされたことがある、ウエィドは下に注意しつつ泳いでいた。


「おっしゃああ、見えてきたあああ」


島が見え、ラストスパートをかけるブロウ。少し遅れてアルフレード、ウェイド。




「ふーー。1番のりだな。思ったより遠かったぜ。さすが海」




「さっさとこいよお前らーー」




「あー、しんど」


「けっこう距離があるもんだな」


「やっと来たか。」


「どうだ、だれかいたか?」


「いや、まだ見てねえな」


「誰かしらいるといいが」


あたりを見渡す3人。しかし、周りにはぽつりぽつりと数メートルの木々が生えているだけである。


「いねえな・・・・」


「住んでる痕跡もないな」


「やっぱ海に住めるやつなんかいなかったか・・・・」




溜息をつき、少し休憩していると


「おい、何もんだお前ら。ぶっとばすぞ」


「なんかぶっそうなのがでてきたぞ」


「ここがどこか知ってんのか」


「ああ。ここはお前ら海の一族の縄張りだろ。」


「知ってるのに入ってくるとはなー」


頭をぼりぼりかきながら、3人を少し睨む。


「おれらは海のむこうから来た龍の一族だ。仲間になるために来た。」


「あ?仲間?何をいってんだ」


「やべー、ここのやつらなにも知らなさそうじゃねえか」


小声でブロウがアルフレードに言っていると、後ろから大きな音が聞こえ振り向いた。


「な、なんだ」


3人が振り向いたがなにもない。しかし、なにか影があることに気づき上を見上げると上空に大量の水そしてその中にわずかに人影が見えた。


「なんだよおい」


ドボ――――――ン


「くそ、またずぶ濡れだ。誰だよ」


「すまんな君たち。」


3人が目を開け見てみると、そこには人と魚の要素がある生物がたっていた。


「私はジェラード。仲間が失礼なことをした。」


喋りだすと徐々に魚の要素が引いていき人間の形になった。

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