第1章 旅の始まり~森の一族

「ほんとに行かないといけないのか」


満月の夜、南の大地の巨岩の上で親子が話している。


「ああ、お前もわかってただろ」


「そうだけどよ~」


「なにも戦争しにいくわけでもないし、気軽に行け」


「わかってる、それでも荷が重いわ」


「お前にも責任感とかがあったのか。気にすんなダメなときはそん時だ。それより誰を連れていくか決めたのか?」


「ああ、ブロウとアルフレードを連れてくよ」


「そうか、あの二人とならなにか起きても大丈夫だろう」


「きっとな。じゃあそろそろ眠いし、戻るわ」


「おう」


この一族には、代々言い伝えられていることがある。選ばれし子が生まれ、海と森に住んでいる一族との同盟を結び、この大地を守ると。


日が顔を出し始めたころ3人の若者が集まって出発しようとしていた。


「あー、ねみーな」


「ブロウ、来たか」


「これで揃ったな、いこうか」


「ああ、はじめは森だったな」


南の大地では、互いの地域に干渉することはない。それゆえ、森、海を間近に見たことがない3人は同盟を結ぶという使命を背負いつつも、どこかワクワクしていた。




三日三晩歩き、3人はようやく森の前へとたどり着いた。




「お、見えてきぞ」


「近くで見るとけっこうでけえな」


「よし、たあのもおおお」


「うるせえブロー」


「へへ、これでだれか来るだろ」


「おまえなあ」


しばらくもめていると森の中から男がでてきた。


「なんだお前たちは」


「ほらきた、おれらは草原の向こうに住んでるんだが同盟を結ぶために来たんだ」


「そんな急に言われてもな」


「中にいれてくれねえか?」


「うーん、敵意はなさそうだが、おいそれといれてやることはできん」


「なら、おれらが来たことを偉い人にでも伝えてくれねえか」


「・・・ちょっと待ってな」


男が戻ろうと振り返るとまた1人飛び出てきた。


「よ。」


「オルガ様」


3人よりも体が二回りはでかく、2mは超えており存在感のある男がでてきた。


「あんたたちが龍の一族か?」


「そうだ、同盟を組みに来た。」


「ふっ、本当に来るとはな」


「あんたのところにも言い伝えがあるのか?」


「言い伝えというか、石だな」


「石?」


「まあいいじゃねえか。そんなことより1人出てきな」


首と腕を回しながら戦闘準備を始めだした。


「は?待てよ。なんで戦うんだよ」


「いきなり会って、即仲間になったとして、そいつを信用できるか?おれはできねえな。いくら先祖たちからの言い伝えだろうが関係ねえ、おれが判断する」


「来たとしたら拳で語り合うと決めてたんだ」


拳を鳴らしながらにやりとしながら3人を見ると


「どうせなら3人まとめてやろうか」


男からかただの風か、そういうと3人に向かってなにかが吹き付ける。


「3人まとめてだと。はっ、俺一人でじゅうぶ


「まて、ブロー」


「ウェイド、なんだよ」


「おれがやる。おれがやらねえと意味がねえ」


「なんでだよ、おれだって」


「頼む」




「うっ。ちっしょうがねえな。負けんなよ」


ウェイドの初めて見せた顔にブローはすんなりと引いた。


「おい、あいつのあんな顔初めて見たぞ」


「久々だな。」


「見たことあんのか」


「ああ、何回かな。普段からやる気がねえわけじゃねえがああなった時のあいつは怖えぞ」


「へええ、なんかスイッチ入ったのか?」


「おそらく、王の自覚とさっきの発言だろう。」


「なんだそれ?」


「お前も怒ったろ。3人まとめてって所が気に食わねえんだろ。人一倍仲間思いだからな。あと、あいつここの王かその側近ぐらいだろう。ウェイドもいずれ継ぐ立場だ。負けられねえと思ったんだろ」




「おい、お前名は?」


「オルガだ」


「そうか。おれの名は、ウェイドジルラーダ。嫌になるほど語り合ってやろうじゃねえか」


「おもしれえ、いくぞ」




30分経過




「オラああああ、まだまだいくぞおおお」


「うるせえ、さっさとくたばれこのやろう」


両者、顔にあざができつつも戦いを楽しんでいる様子。同時に若干ウェイドが押されはじめる。


「おい、大丈夫かよ」


「パワーじゃ負けてる分押され始めたな」


「ああああ、やっぱおれがいっときぁよかったぜ」


「かわらんだろ。ま、まだ本気ではないから心配はいらんと思うが。オルガってやつもまだまだ   力を隠してそうだがな」




「まだまだぴんぴんしてやがんな、こいつ。しかたねえ。」


ウェイドは素早く距離をとった。そして、オルガにむかって走り跳んだ。


「ちったあくらいやがれ」


空中で体を捻り渾身のかかと落としをかまそうとする。するとオルガは、右の拳を大きく振りかぶり待ち構えていた


「おらああああ」


「「ガキッッッ」」




両者の攻撃がぶつかり、骨と骨がぶつかる嫌な音がなり響いた




「どうなった」




「なかなかやるじゃねえか」


オルガが、右こぶしをまだ伸ばしたままそういうとにやりと笑う。


「お前もな」


少し後方に飛ばされたウェイドもにやりと笑い返す。


 (このやろう、全体重かけたってのに右ストレートではじき返しやがった。)


オルガの底知れぬパワーへの驚きを顔に出さぬよう、平静に装うように努めた。




すかさず互いに攻撃しようと走り出した途端、なにかがものすごい勢いで降ってきた。


ずどぅぅぅぅぅぉぉぉんん


砂煙が2人だけじゃなく周りの観戦者も包み込む。


「うおっ、なんだよ。なにが起きた。」


「一瞬人影が見えた。どっから降ってきやがった。」

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