第2枚目【来たぜ来たぜ来たぜ!私にだけ微笑む女神よ!】

 ご機嫌はいかがかしら? 下界にいる下々の諸君。

 こんにちわ、わたくしの名前は〝レミリシャル〟。


 誰もが羨む白銀の長髪と同色の瞳。

 誰もが振り返る程の美貌と両翼。

 誰もが尊敬の眼差しを向ける神々しい華やかさを持っていま――


「わ~い揃った!」

「俺も上がり~!」


 どうやら、敵である二人は手持ちが無くなったみたいね。


 私の手元には〝♡のA〟。

 あと一枚揃えば勝ち……


 場には♧や♢が出ているから残るは〝♤のA〟ね。


『ドックン・ドックン・ドックン』

 えぇい静まれ、我が鼓動よ。

 大事な物を賭けた勝負って言うのは、震えるほどに熱くなるもんだ!!


『スッ』


 光の速さで引いたカードを見て驚愕した。

 何たってこのカード――


『笑』


 にににっ……ニッコリしてやがる。

 何だコイツ、可愛いぞ。超絶怒涛にキュートじゃねぇか。

 フフフッ、どうやら〝勝利の女神〟は私に微笑んだようね。


 まぁ、私も〝異世界転生者管理・勇者転生救済処置課〟の一員である女神だけどね!!


 そして相手のターン。


 私はこの〝笑顔の人スマイルちゃん〟を指に万力の如き力を入れて死守。


 連れ去られた〝♡のA〟を見て、何故だか哀れむ眼をした相手。


 だが愚か者めっ!。


 もうカードを取られたことを後悔しても遅いのよっ!


 これで私の勝ちだあぁぁぁぁ!


『ズダアァァァァンッ!!!』


「この女神であるレミリシャルが召還せしは最強のカード。その名も〝笑顔の人スマイルちゃん〟だ!!!」


 稲妻の如く置かれた一枚のカードは、摩擦で大量の煙を出して顕現した。


 動揺して固まる有象無象の他三名。


「アハハハハッ! バカめっ油断しおって! この私に勝とうなんて何百年も早いのよ!!」


 超が付くほど優秀な私はカードの散らばった机に脚を乗せて叫んでやった。


 だって勝ったんだもの。

 勝者は敗者を笑うものでしょ?

 あー、お腹が痛くなってきたわ。


「さぁ、私に頭を垂れて金を出しなお前たち!! ジャンプして幸福の音を鳴らすんだよ!」


 女神である私に後光が差し、格好良く決めてやったぜ。

 どうだ!人間の児戯等、所詮はこんなもんよ!


「ん? 何をゴソゴソとやっているのだ?」


 齢十才頃の子供達ガキども三人が、何やらカードを指差して言っている。


「お姉ちゃん、これはだよ? 


「へ? ジョーカー? My defeat私の負け?」


 危なく脳がショートしそうになったが、散らばったカードを両手でバラバラにしてやったわ。


「今のは練習だから~カウントはなしなし! 


 唖然とする子供達キッズどもだが、私の勢いに気圧されたようだな。


 きを取り直して仕切り直しといこうか。


 これが大人の、女神の余裕って奴だぜ。


 ふぅ、とは言えルールが解ればこっちのもんよ。

 何たって私は、誰もが羨む白銀の長髪(以下略)


 数分後――その次も、その次も私は負け続けた。

 熱くなった私だが、財布を見てみれば綺麗に〝無〟だった。


『パタンッ』


 見なかった事にして静かに閉じた。


「もう一度だけ私にチャンスを――」


 そう言ったが、気が付けばチャイムが鳴り響く夕方。


 少年達は笑顔で勝ち逃げしやがった。


「グスンッ。最初から空だったし……負けてないもん」


 帰り際に肩を落とす私を見た名も無きおじさんが、小さな飴ちゃんをくれた。


 端玉で交換できる何かの景品だろう。


 甘い筈の飴ちゃんは、不思議としょっぱかった。


【遊戯内容→賭けババ抜き】

【本日の収支】


 投資額 諭吉ゆきち様が六人

 回収額 なし

 これまでの負け額 諭吉様→百三十四人



 これは女神であるレミリシャルが仕事を少しだけしつつ、ギャンブルにのめり込みながらもほのぼのと過ごす……そんなお話である。


 ★


 拝啓


 女神長様めがみちょうさま


 先日、五百万円のご入金を確認いたしました。

 これで路頭に迷わずにry――


 ゲフンゲフンッ……。


 さぁて、肝心の〝異世界転生者探し〟ですが、努力の甲斐あって順調に進んでおります。


 いま暫しお待ちををを!!


 by.貴女を心から尊敬する女神―レミリシャル―より


 PS.悲報ですが日本国このくにでは、満面の笑顔を持った悪魔も要るようです。ご注意を!


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