第77話

「そうだ。勉強もできてスポーツもできて女子にも人気のあるルキのことを、妬んでいた」



「そんなの、僕に言われてもどうしようもないよ」



勉強もスポーツも人一倍に頑張って来たから得られた成果だった。



それを妬まれる覚えなんてない。



「それに加えてルキの態度が加わったんだ。わかるだろ?」



今まで静かだったカエルがそう言って来た。



「確かに僕の態度は悪かったかもしれない。でも、だからってあんな……」



「その通りだ」



写真が深く頷いた。



「どんな理由があっても、人をイジメていい理由になんてならない。イジメは心が弱いヤツがやる事だ」



「だけど、自分の得意な事を鼻にかけて人を見下す事も、同じくらい愚かなことだ」



カエルが写真の言葉の後に続けて言った。



僕は言葉を失い、俯いた。



「浩が君の事をイジメてしまったことを、俺からも謝りたい。本当に悪かったと思っている」



「写真に謝られてもね……」



僕はそう言い、軽く笑った。



笑ったつもりだったけれど、きっと笑顔にはなれていなかったと思う。



写真が言っていることも、カエルが言っていることもよく理解できていた。



自分の行動を振り返って初めて自分にも悪い部分があったかもしれないと思えていた。



それでも、納得できていなかった



「僕は、クラス中から相手にされなくなったんだ」



自分の声がひどく震えている。



気が付けば、体全体が小さく震えていたことに気が付いた。



思い出したくない出来事を思い出し、知りたくなった情報がどんどん入ってきて僕はとても混乱しているのかもしれない。



「そう。ルキへのイジメは3人が思っている以上に周囲に飛び火してしまったんだ。当人たちがそれを鎮めようとしても、もう無理だった」



「鎮めようとした?」



僕は写真にそう聞き返した。



あいつらがイジメを止めようとしていたなんて、到底信じられることじゃなかった。



「信じられないなら、実際に見てみればいい」



カエルがそう言い、立ち上がった。



「湖へ行きましょう」



ネックレスが、静かな声でそう言ったのだった。

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