第78話
僕とカエル。
本とネックレスと写真。
という5人でぞろぞろと湖へ向けて歩き出していた。
僕たちの前を3人が歩き、僕はカエルと一緒に重たい足を引きずるようにしてその後を付いて行った。
できればこのまま逃げ帰ってしまいたい。
もう、生前の僕を知っている物になんか会いたくなかった。
僕は現実世界から逃げ切ることもできず、こんな中途半端な町に止まっているのだ。
それならいっそ、呼吸が止まってしまえばいいのにとさえ、感じられていた。
それほどまで、僕にとっての現実世界は地獄だったのだ。
カエルはずっと僕の事を見ていたから、その事をわかっているのだろう。
ゆっくりと歩く僕の歩調に合わせてくれている。
僕が何か言えば返事をしてくれるが、それ以外の時は無言で歩き続けていた。
蛇女の山を通り過ぎると、すぐにひょうたん型の湖が現れる。
今日も沢山の物たちが持ち主の様子を見に、湖に集まってきていた。
湖面を見ると町の様子が映し出されている。
いつもとなにも変わらない平和な町にしか見えない。
「学校をズームしていくぞ」
カエルがそう言い、湖面に触れた。
すると水の中の映像はグッと大きくなり、学校の内側までカメラが入り込んでいった。
廊下を行きかう生徒たちの顔がはっきりとわかる。
こんな風に見えていたのか。
建物のここまで鮮明に見えていたカエルは、僕の姿を見てなにを感じていたのだろうか。
そう思ってカエルの横顔を覗き見るが、カエルは真剣な表情で湖面を見つめているだけだった。
「浩だ」
写真がそう呟いたので、僕は湖面へと視線を戻した。
確かに、画面内に浩の姿があった。
浩は相変わらず2人の後をついて歩いている。
「今学校は放課後かな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます