第76話

まだ仲が良かった頃に撮った写真で、僕は3人の友人に囲まれるようにして笑っている。



「これを、誰かが捨てたの?」



「俺の持ち主は浩だ」



「浩……」



グループの中では一番背が低く、勉強もスポーツも苦手な小橋浩(コハシ ヒロ)。



だけどお笑いが大好きで、ミサと2人で好きなお笑い番組について熱心に会話をしていたっけ。



僕は写真の中で大きな口を開けて笑っている浩を見た。



確かこの写真を撮る時浩が面白い一発ギャグを言ってみんなを笑わせたんだっけ。



だからみんなこんなに弾けるような笑顔を浮かべているんだ。



懐かしさに余計に胸が締め付けられる。



写真をジッと見ている事ができなくなって、僕は写真を床に戻した。



「俺は、お前たち4人の関係の象徴だ」



写真は胸を張ってそう言った。



僕は左右に首をふる。



「もう無理だよ。その頃には戻れない」



「そんなことはない。この写真の中のお前たちは本物の笑顔を見せる事ができている」



「そうかもしれないけど、それはもう過去の出来事なんだ。お前はもう捨てられたんだよ」



いらないものとして処分されたものは、象徴でもなんでもない。



ただのゴミだ。



「浩はルキの事を尊敬していた」



「冗談だろ?」



写真の言葉に僕は笑ってしまう。



浩は金魚のフンのように僕たちに付いて回っていたが、イジメが始まった瞬間手のひらを反した。



浩は自分が標的にならないよう、徹底的に僕をイジメる事に専念していたように見えていた。



「冗談なんかじゃない。本当のことだ」



写真は真剣な表情でそう言い切った。



「浩だけじゃない。他の2人も同じ気持ちだった」



「悪い嘘はやめてくれ」



僕はそう言い、左右に首をふってみせた。



もうこれ以上は聞きたくなかった。



散々僕をイジメていた連中が僕の事を尊敬していただなんて、信じられるわけがない。



「尊敬する半面、妬んでもいた」



「妬む……?」

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