第7話

カエルに連れられて歩いている間も、僕は目覚める事がなかった。



どうやら深い深い眠りについてしまっているようで、こんなリアルな夢を見るのはその深い眠りが原因のようだ。



と、勝手に分析してみた。



山から下りて町が近づいてくると、オレンジ色の街灯が目立ち始めた。



「珍しいね」



「何がだ」



「オレンジ色の街灯だよ。今はほとんどLEDに代わって真っ白な光になってるだろ?」



「そうなのか?」



「そうだよ。時々青い街灯もあるけど、あれは気持ちを落ち着かせるために青くしているらしいよ」



「気持ちを落ち着かせる?」



「そう。犯罪を抑制させる効果があるんだって」



僕はカエルの後ろ姿へ向けて話しかけながら進んでいく。



カエルは僕の話に興味深そうに相槌を打ちながら飛び跳ねる。



「ここが町の入り口だ」



見ると古ぼけたアーケードがあり、そこにはほとんど消えかけた文字で【捨てられた町】と書かれているのが読み取れた。



そこから視線を落としていくと、民家がズラリと立ち並んでいる。



昔ながらの瓦屋根の大きな家が多い。



「こっちだ」



カエルが再び飛び跳ねて誘導してくれる。



僕はその後ろをついて歩きながら町中を眺めた。



丘の上から見ると大きなビルだったが、近くで見ると団地だった。



沢山の子供たちの声が聞こえてきている。



「いまどき団地があるんだ」



「なんだ? 団地も珍しいのか?」



カエルが振り向いて聞いて来た。



「珍しいよ。今は少子化でこういう建物はどんどんなくなっていってる」



「少子化?」



「なんだよ。少子化も知らないのか?」



僕は自信満々で少子化の意味をカエルに教えた。



「子供が少なくなっているのか」



「そうだよ」



「最近の女は産まないのか?」



「それだけじゃなくて、保育所の問題とか、出産後の社会復帰の問題とか、まぁ色々あるみたいだよ」



深く聞かれると説明することができなくて、僕は『色々』という言葉で誤魔化した。



「そうか。そっちの町は大変そうだな」



カエルはそう言い、一軒家の前で立ちどまった。



僕も同じように立ち止まり、その家を見上げる。



さっきから見ている昔ながらの一軒家と何も代わりないけれど、どこかで見たことがある気がして僕は目を凝らした。



灰色の瓦に、クリーム色の壁。



大きな庭を取り囲むようにしてブロック塀が立っている。

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