第3話

カエルは人間でいう肩をすくめるような動作をして見せてそう言った。



ちょっと諦めが早すぎやしないか。



それより全然話についていく事ができない。



僕はブンブンと強く頭を振った。



もしかしてこれは悪い夢なのではないかと思い、自分の頬をつねる。



「痛い」



「ルキはバカなのか?」



頬をつねる僕を見てカエルは更に呆れた表情を浮かべた。



カエルのオモチャにバカにされるなんて現実世界で起こるわけがない。



これは夢だ。



悪い夢だ。



「さ、茶番ごとは終わりにして行くぞ」



まだ自分の頬をつねっている僕を無視してカエルは歩き出した。



「あ、ちょっと……」



と、追いかけようとしてすぐに立ち止まる。



カエルは僕の名前を呼び、僕を迎えに来たと言っていた。



だけどこのままついて行って本当に大丈夫なのだろうか?



ここがどこかわからないまま、オモチャのカエルを信用してついていく事なんてできるわけがない!



「どうしたルキ」



茂みの揺れが収まり、カエルの声が聞こえて来た。



カエルが振り返ってこちらを見ている様子が安易に想像できた。



「僕は1人でこの丘を下るから大丈夫だ」



僕はそう言い、カエルとは逆方向へと歩き出した。



これはどうせ夢なんだ。



丘から下りたいと強く願えば簡単に下りれるに決まっている。



「おいルキ、そっちは危ないぞ!」



「はいはい。ご心配ありがとうね」



僕はカエルがいる方向へヒラヒラと手を振り、カエルにさよならしたのだった。

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