第2話
「うわっ⁉」
茂みの中から現れた何かを確認する暇もなく、僕は尻餅をついてしまっていた。
幸い、僕の周りにも草が生い茂っているため、痛みは軽減された。
「ルキ。迎えに来たぞ」
低く渋い声が聞こえて来て僕は上半身を起こした。
周囲を見回すが、相変わらず何もない丘が続いているだけで人の姿はない。
「幻聴か……?」
小さな声で呟いた。
今、僕の名前を呼ばれた気がしたけれど……。
「幻聴じゃない。こっちだ」
今度もハッキリと聞こえて来てその声にビクリと体を震わせ、視線を落とした。
こけた僕の膝の上にチョコンと座っているカエルが見えた。
緑色の背中はツルリとしていてまるでプラスチックのよう。
そしてその背中には同じ色の紐がでろーんと出ているのだ。
僕は瞬きを繰り返し、何度も目をこすった。
それでも僕の膝の上に座っているカエルは消えない。
「なんだこれ、オモチャか? いつの間にこんな所にあったんだ?」
混乱しながらカエルに手を伸ばす。
あと数センチでカエルに手が届くという所でカエルが喋った。
「ルキ、迎えに来たぞ」
「うわっ!?」
さっきから聞こえてきているハスキーな声がカエルから聞こえて来て、僕は咄嗟に飛びのいた。
膝に乗っかっていたカエルのオモチャはそのまま落ちるのではなく、ピョンッと飛びのいて地面に着地した。
そして、ゆっくりと僕を見上げたのだ。
クリクリとした大きな目が僕を捕らえていて、バッタのように食べられてしまうんじゃないかと不安になる。
「少し驚きすぎだな」
カエルは呆れたような声でそう言った。
「な、なんで……カエルが……おもちゃが喋って……⁉」
混乱しすぎてまともな言葉を紡ぐこともできなくなってしまった。
僕は目の前の光景に目を白黒させるばかりだった。
「まぁ落ち着け。ルキが気づいている通り俺はオモチャだ。カエルのな」
さも当然のようにそんな事を言った。
「ここはそういう町だ。物がしゃべり、物が歩く。そういう町だ」
「そ、そんなのおかしいだろ⁉」
「おかしいと言われてもそれが事実なんだからどうしようもない。諦めろ」
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