12-11 里見の決意

 子供達の惨状を知っている里見は、断れなくなっていた。


「それで、いつまでやればいいんですか?梨沙の代わり……」


「最低十年はお願いします。十年経てば、末っ子の冬李君も中学生なので、……そこで梨沙が反省していれば、元に戻してください」


「十年ですか?それと、梨沙が反省しないとどうなるんです?それに反省したかどうかなんて、どうやって分かるんです?」


「反省したかどうかは聞いてみてください。里見さんは霊として漂っている梨沙さんが見えますし、会話もできます。ただ、反省しているように感じるまでは、見えることを悟られないでください。そして、反省しない場合ですが、子供たちが独立するまで、里見さんには、梨沙として生きていただくことになります。三十年くらいですが……」


 里見は、しばらく考えた後、翔磨の暴力を受け、梨沙に見放される子供達の事を思い、ついに決心した。


「きっと受けてくださると思っていました。やれば義弘さんの時のように、子供達と離れ難くなると思いますよ」


 少し冷やかし気味に言う梢女に対し、


「そんなこと言うと、受けませんよ」


 と冗談交じりに里見が返した。


「ウフフフ。もうダメですよ。受けていただいた時点で、始まってますから」


 梢女は笑うと、里見の魂は、梨沙の肉体に向かって飛んでいった。

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