12-10 梢女の依頼

 ーー那楽華の湯ーー


 梨沙が絶望にくれる二日前……



「里見さん、ドッペルゲンガーって知ってます?自分とそっくりな人間が現れて、乗っ取られるという。……あなたには、それをやってほしいんですよ」


「なんだかよく分かりませんが、手順を追って話してもらえますか?」


 里見にはさっぱり通じていないようだった。


「そうですね。まず、梨沙の魂を肉体から追い出します。そして里見さんに、その空いた肉体に入っていただきます。その後……」


 そこまで聞くと、里見は慌てて首を振り、話を遮った。


「ダメダメ、義君の時、人の体に入るなんて嫌だって言ったじゃないですか。やりませんよ。気持ちの悪い」


「頼みますよ。『できることならやります』って言ったじゃないですか。あの子たちのために、お願いしますよ」


「あの子達って、どういうことですか?」


「里見さんには、そのまま梨沙として、母親として生きていただくということです」


 これには、さすがの里見も目を丸くして動揺した。


「いやー、無理無理無理ですって、母親なんて……。私、結婚もしてないんですよ。いきなり四人の子持ちなんて。それに、梨沙の魂はどうなるんですか?あの世行きですか?」


「梨沙はあの世へは逝けず、現世を漂うことになります。太田家で育った里見さんなら分かるはずです。それと子育てはしたことないと思いますが、太田家の子育ては見てきたはずです。それに義弘さんについてた時も、半分お母さんみたいなものでしたよ。ねっ、あの子たちのために……」

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