12-9 明るい子供達

 七時を過ぎた頃、ようやく玄関ドアが開いた。


「行ってきまーす!」


 波瑠の元気のいい声が聞こえた。


(あの子、あんなに元気よく「行ってきます」なんて言わなかったのに)と思っていると、


「行ってくるね。ママ」


 という奈摘の明るい声が聞こえた。


(ママ?どういうこと?)


 不思議に思っていると、波瑠と奈摘の後ろから、梨沙と瓜二つの女性が出てきた。


「何?あの女!服も……あれ私のじゃない!」


 駐車場に立っていた梨沙は、そっくりさんに向かってつかつかと歩き出した。



「ユカちゃーん!」


 友達のユカちゃんを見つけた奈摘が、梨沙の方に向かって走ってきた。


「奈摘、ぶつかる」


 梨沙は避けることもできず、奈摘と正面からぶつかった。……いや、ぶつかったはずだった。衝撃に備えた梨沙の身体を、奈摘はすり抜けていったのだった。


 何が起きたのか理解できない梨沙は、それでも自分と入れ替わった女の前に立ち、思い切り叫んだ。


「てめえ、誰だよ!勝手に人のふりして家に入ってくるじゃねえぞ。しばくぞ!」


 しかし女は梨沙の存在そのものを否定するかのように、ガン無視したまま、家に入っていった。


 どうしていいか分からなくなった梨沙は、自動車で翔磨の所へ行こうとした。しかし自動車のドアノブを指がすり抜けてしまい、ドアを開けることはできなかった。


「私って、いったい……」


 絶望にくれる梨沙の耳に、亜希と冬李の笑い声が聞こえた。



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