6-12 たっくんママ
拓哉がゲームをクリアしてから、しばらく大騒動だった。
スポーツ新聞には、「ファイブストーンズファンタジー奇跡のクリア」と報道され、製作者のインタビューも載った。
ーー製作者ーー
「あと一年くらいは誰もクリアできないと思ってました。マザードラゴン(京子のこと)の卵も絶対に見つからないような場所に隠しておいたのですが」
Q:このことでアップデートが早まったりしますか?
「アップデート?大きいのはまだまだ……スケジュール通りに進めますよ」
拓哉はあれからほとんどゲームをやらなくなった。あれだけ刺激的な体験をしたせいか、別のゲームをやっても興奮しなくなってしまったのだ。
「母さん、仕事見つけてきたよ」
職探しを始めた拓哉が帰ってきた。
「母さんまたやってんの?勝手に母さんのフレンドを俺につなげるのやめてくれよ」
ゲームに興味を持った京子は、拓哉とは対照的にゲームを始めたのだった。もちろん何時間もプレイするわけでもなく、目的はゲーム内でのコミュニケーションだった。何しろヒーローの母である。大勢がつながりを持ちたがった。
「今日はテテテテっていう子が、ゼルデブブ山のボス手伝って欲しいそうよ」
「何?それ!怪しい名前の人とは、つながり持っちゃダメだって言ったでしょう」
勝手に手伝いを引き受けてくることもあった。
「だいたい……そのアカウント名から変えて欲しいわ……たっくんママって……」
こうしてたっくんブームが治るまでは、京子の冒険は続いた。
そして、アップデートが行われた一年後、今井家のゲーミングPCは埃をかぶっていた。
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