1-2 魂の行方

 タバコ屋を曲がると、地図にあるとおり那楽華の湯の前に出た。


「テレビCMやってる割には流行ってなさそうだな」


 古ぼけた外観が意外に思えたが、中に入ると客はそこそこ入っていて、盛況に思えた。


「いらっしゃいませ」


 誠也は受付の女性に靴箱の鍵を渡した。


 受付の女性は誠也の顔を一瞥すると、ロビーを指差して言った。


「ロビーに担当がおりますので、あの赤い服を着た店員にお声かけください」


「担当って、なんの担当ですか?」


「全てはあちらの店員にお聞きください」


 このまま尋ねても、らちがあかないので、誠也は言われるまま赤い服の店員のところへ行った。



「いらっしゃいませ。担当の梢女と申します」


 アラフォーのどこにでも居そうなおばさんという感じの店員が声をかけてきた。


「担当って何をしてくれるんですか?オレ、風呂に入りたいだけなんですけど」


「本当にそうですか?何か悩みがあるのではないですか?」


「ありませんよ。……てか……悩みのない人間なんていないでしょう。もういいですか?」


「確かにその通り……悩みのない人間なんていないかもしれません。しかし、あなたの悩みは深いのではないですか?例えば毎晩夢に出てくるくらい悩まされているとか」

「私どもはそのような方の悩みを聞き、解決に導いてさしあげることを生業としておるのでございます。さあ、お話ください」


 夢のことを言い当てられ、誠也はこのおばさんに話してみるのもいいかな。と、思い始めた。

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