入浴すると悩みを解決できる銭湯があるという都市伝説 那楽華の湯

北城 真

第1話 偽善

1-1 寝覚め

 佐藤 誠也せいや 二十二歳


 今日も悪夢で目が覚めた。自分は呪われているのかと思うほど同じ夢を見る。高校時代にあったいじめの夢だ。と言ってもいじめられていたわけではない。いじめられていたのは、小学校の時の親友西尾奏多かなただった。



「なんだよ!二千円って……なめてんのか?おら!」


「ごめんなさい」


「昨日、五万持って来いって言ったよな」


 四人のいじめグループがトイレに奏多を追い詰めるところだ。


「こいつ数字がわかんねえんじゃね。犬だから……」


「そうか……でも犬が服着てるなんておかしいよな」


「ごめんなさい。許してください」


「あれー……犬がしゃべったぞお」


 そこから更にいじめはエスカレートしていくのだ。



 今思い出しても吐き気のする陰惨ないじめだった。


 誠也は気を紛らわせようと、部屋にあるテレビをつけた。


「くつろげる。癒される。浸かるだけで全て解決!日帰り温泉 那楽華の湯!ぜひ一度お越しください」


 CM画面には「入泉料五百円 貸しタオルあり お待ちしてます」の文字が映った。


(今日は暇だし、行ってみるかな?)


 スマホで「那楽華の湯」を検索すると、地図が出てきた。


「こんな近くって、行くしかないな」


 誠也はベッドから起き上がった。

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