2-8 猫は猫
丈瑠との
「ナルタン、どうしたんだよ。最近帰るの遅いよ。寂しいじゃないかよお」
ブン太はこれまで通り晩御飯を用意して待ってくれているのだが、食事も丈瑠とすませて帰ることが多くなった。ブン太にはスマホもないから連絡も取れないのだ。
「ナルタン、風呂入ろ」
「ごめん(今日飲んできたから)シャワーだけにしとく」
ブン太と過ごす時間が次第に少なくなるうちに、成美はブン太のことが疎ましく思えるようになってきた。気持ちも徐々に離れていき、ブン太のいる前で丈瑠と長電話したり、朝帰りをしたりするようになっていった。
その日も、横にいるブン太の事を気にせず丈瑠とスマホで話していた。
「明日、誕生日だろ?ホテルキャッスルのレストランとったから」
「えー!嬉しい。でもホテルなんて珍しいじゃない」
ここでブン太は成美のスマホを取り上げた。
「ちょっ!何すんのよ」
「えっ?何?成美なにかいった?」
丈瑠の声が成美の耳に届いた。
「ごめん、猫のブン太がイタズラして……。明日の時間は?」
「19時!待ってるから」
「うん。ありがとう、明日楽しみにしてるから」
成美はブン太からスマホを取り返し、電話を切った。
「何すんのよ!ブン太」
「丈瑠……悪いやつだから、……ナルタン守らないと。ナルタンには僕がいるから」
「もうーやめて!あなたは猫なの!どうしたってネコ!だから私達に関わるのはやめて」
成美は、言ってすぐにシマッタと後悔した。自分自身が嫌悪感に苛まれるほど酷い事を口にしてしまった。
その後ブン太は黙ってウチを出て行った。
成美は「ブン太」と止めようとしたが、諦めた。ブン太のことだ、腹が減ったら帰ってくるだろう。……そのくらいにしか考えていなかったからだ。むしろ明日のホテルディナーの方が成美にとっては一大事だった。
しかし、これが取り返しのつかない悲劇を生むなど成美は想像もしていなかった……。
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