2-7 丈瑠の真相

 マックに入ると、丈瑠が控え目に手を振ってきた。横には何となく見覚えのある男性が座っていた。


 成美は、取り敢えずその男性にペコッと頭を下げて、丈瑠の向かい側に座った。別れて二週間程度が過ぎたが、成美は丈瑠の顔を真正面から見ることはできなかった。丈瑠も同様で、おかしな雰囲気が漂っていた。


少しの沈黙の後、丈瑠が口を開いた。


「いきなり呼び出してごめんな……横にいるこいつ、高校からの友達で、橋元優希。写真で見たことあるだろ?」


そう言えば、丈瑠の見せる写真で、よく見かけた顔だった。だから見覚えのある顔だったのだと納得した成美だったが、今さら高校の友達を紹介する丈瑠の行為を理解できず、早々に帰りたい気分になった。


「私に合わせたいっていうのは、そのお友達?」


この言葉を聞いて、成美が興味を示してくれたと勘違いしたのか、丈瑠は安心したように話を進めた。


「そうなんだ。それでちょっとこれを見てくれないかな?」


 丈瑠は優希という男子に目で合図した。


 優希はスマホの画面を成美に向け、一枚の画像を見せた。そこには優希本人とその彼女らしき女性が写っていた。


「その子見覚えあるだろ?」


 丈瑠が成美の様子を気にしながら、尋ねてきた。


「あっ!」


 そのは、数日前、夜の街を丈瑠と歩いていた女だった。それを成美が見たことから丈瑠との喧嘩が始まったのだ。


「成美さん、ごめん」

 優希が立ち上がり、気まずそうに頭を下げた。


「この俺の彼女なんだ。先々週、駅まで迎えに来てって頼まれたけど、どうしても行けなくてさ。それで、こいつに頼んだんだ。……その後それが原因で、丈瑠と君が喧嘩別れしたって聞いたんだけど、俺、ホント困っちゃってさあ……申し訳なくて。……成美さん、なんとか元に戻ってくれないかなあ。丈瑠って、学生の時はモテすぎて悪いこともやってたけど、君と付き合ってからは、どうしたんだってほど君一筋だったんだよ。信じてもらえないかなあ」


 成美はこの日初めて丈瑠を正面から見た。


「どうして言ってくれなかったのよ。友達の彼女なんだって」


丈瑠は呆れ顔で答えた。


「言ったさあ!……だけど聞いてくれなかったろ? だからこうして優希まで連れてきたんだよ」


 成美もあの時のことを思い出すと、確かにそんなことを聞いたかもしれないと思った。


(何を聞いても信じる気にならなかったから、聞いてなかったかも)


 成美は心にあったモヤモヤが晴れた気がした。


「なあ、もう一度やり直さないか?」


「うん」

 頷いた成美から笑みがこぼれた。

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