第48話 夏祭り

「おーーい!こっちだこっち!!」


輝弘がデカい声をあげながら両手を広げていた。どうやら俺達以外はもう揃っているみたいだ。

俺と美玖は皆の所に向かった。


「悪い!五分前に着いたはずだけど、遅かったか?」


俺は腕時計を見たけど、約束した時間よりも早かった。


「いや、ちゃんと五分前行動出来てるぜ!俺達が少しだけ早かったんだよ。何せ楽しみだったからな!」


「輝弘にとっては夏祭りの終わりに勝ち確定のビッグイベントが待っているから、楽しみで仕方なかっただろう。」


「うぐっ!?……勝ち確定かはまだ分からないだろ!?一応覚悟は決めてきたけど、今から言われたら緊張して楽しめなくなるだろ!!」


「ふっ。2人だけの世界を作っていた癖に、何を怯えてるんだ?……輝弘なら大丈夫だろう。輝弘は男らしいし……何より金澤とお似合いだからな。」


淳史が輝弘の背中を優しく叩きながら言った。

……ていうかあのテンションだった淳史が良く海の記憶があったな。記憶があるなら恥ずかしくないのか?


「……そういえば!猛は浴衣着てきたんだな!カッコいいじゃん!」


「急に話しを変えたな……まぁ、いいや。サンキュー。浴衣着てるのは俺と美玖だけなんだな。てっきり皆もレンタルしてくるのかと思った。」


「いやー、浴衣って慣れないと歩きにくいだろ?だから今回は私服で来たわ。」


確かに浴衣はいつもより歩幅を小さくしないといけないから、慣れてないと大変だしなー。実際俺もかなり歩きづらかったから思いの外時間がかかった。


「俺も今回は遠慮させてもらった。夏休みは今日で最後だが、夏祭りは別の地域でもあるだろうから今度は皆で着れば良いさ。」


「それもそうだな。……夏休みも終わっちまうのか。学校ダル。」


「猛は学校の勉強大っ嫌いだもんな!……ちゃんと課題終わらせてあるかー?」


俺の言葉に輝弘がニヤけながら茶化すように言ってきた。


「終わってるわ!!輝弘だって俺と一緒で勉強嫌いだろ!!輝弘こそ終わらせてあるのかよ!」


「俺も終わらせてあるぜ!まぁ、勉強は嫌いだけど、学校の友達に会えるから楽しみでもあるな!!」


「ぐっ!この陽キャリア充野郎……。」


「猛にだけはリア充呼ばわりされたくねー!!」


俺と輝弘のふざけ合いをやれやれという感じで見守る淳史がいた。


「男子どもー……ふざけ合ってないでそろそろ行こうぜー?高崎もあんまり渡部とイチャついてると、美玖と杏奈が嫉妬に狂った獣になるよー?」


「ふえっ!?私はそんなことしないよ〜!止めてよ可奈〜!」


「あ、あたしだってしないわ!!……し、嫉妬なんてしてないんだかんね!?」


美玖は濱谷をポカポカ叩き、金澤は輝弘の方を見ながらツンデレ?な発言をしていた。

これは勝ち確ですわ。輝弘もとっとと勝ち確なことに気付けば良いんだけどな。


まぁ、こればっかりは輝弘に任せよう。周りがとやかく言っても仕方ないし。


「濱谷こそ今日も淳史の手綱は任せたからな?淳史が暴走したら全て託す!」


「はあ!?高崎お前アホ!?海でどんな目にあったと思ってんの!!」


「いやー、濱谷が教えてくれなかったから知らないなー。……ああ、淳史が言いかけた言葉なら覚えてるぜ?なんだっけ、海でポロ……」


「わーわー!!それ以上は言うなー!!……分かった。あのバカが暴走しないように見張る。それでいいっしょ!?」


濱谷が俺の言葉を遮った。淳史が全部暴露してたようなもんだしな。それ以外にもまだ何かされてそうな気がしてならないけど、追求はしないでおいてやろう。

金澤がいじられるのはともかく美玖まで巻き込んだからには濱谷も巻き込まないとな。


そして俺達は夏祭りが行われている神社に入っていった。


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