第40話 甲子園
美玖と同棲して過ごす初めての夏休みは今までよりも時間が早く流れているように感じた。
今はバスに乗って大阪に向かって高速道路を走っていた。
今日から野球球児にとって憧れの舞台である、甲子園で行われる全国大会が開催される。
俺の学校も親友である輝弘の活躍により、全国大会出場権を勝ち取った。開会式の後の1回戦に輝弘達が戦うことになっている。
「輝弘の奴、憧れの舞台で舞い上がらないと良いんだけどなー。」
「うーん……いつも通りに投げようとしても難しいって聞くよね。」
俺と美玖はバスの中で隣同士に座って話していた。俺は毎年夏休みになると夏の甲子園をテレビで見るのが好きで美玖も一緒に見ているから、自分達の本来の力が出せずに負けてしまうチームを見ているから、どうしても心配になってしまう。
「私達は心配してあげるよりも全力でプレーする選手たちを応援してあげた方が良いんじゃないかなー。」
美玖が優しい声音で言った。
「そうだな。輝弘達が頑張る姿に応援してやる事くらいしか出来ないもんな。精一杯応援してやらないとな!」
目標に頑張っている人は俺にとって尊敬出来る存在だから、輝弘にはいつも通りの力を出して欲しいと心から願った。
大阪に到着して甲子園球場内に入って案内に従って指定の席に移動した。
開会式が終わりいよいよ試合が始まった。
相手は夏の大会常連校だったが、輝弘は立ち上がりこそ不安定で打たれてしまったが、徐々に調子を戻していった輝弘は変化球とストレートで三振を奪った。
「輝弘の奴初めての全国大会で三振を量産しはじめやがった……スゲーな。」
「流石だね。1年生ながらにしてエースなだけあるねー。」
しかし、相手のピッチャーから点を取れなかった。点が取れなければ最初の立ち上がりに点を取られているため、負けてしまうのは必然だった。
輝弘達も勝とうと奮闘したが、点を取れないまま負けてしまった……。
「負けちゃったか……。」
俺は応援席から甲子園の土を集めている選手たちを眺めていた。
「負けちゃったね……でも、最後の方は互角に見えたんだけどなー。」
美玖も拍手をしながら言った。
「相手は夏の全国大会常連校だったし、自分よりも格上に勝つためには互角じゃダメなんだ。勝つには相手を上回らないといけないんだ……。」
実力が互角だその場所の雰囲気を経験している方が有利なのは当たり前だ。独特な雰囲気に飲まれずに最初からいつも通りのプレーが出来るのと出来ないのでは違ってくる。
「……そうだね。」
「今は声をかけないでおこうぜ……こういう時は後にした方が良い。」
俺は言いながら送迎バスが停まっている駐車場に向かって歩いていった。
バスに乗って地元に帰るのだった。バスの中は暗い雰囲気になっていた。
輝弘が落ち着いて遊べる状態になったら、海にでも遊びに行くか……。
いつまでも引きずってたら次の目標も決めることが出来ないしな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます