第35話 ボコボコにされた後は可愛い彼女の甘い看護

終業式が終わり、美玖は金澤達と女子だけで遊びに行って1人で家に帰っても暇だと感じた俺は

親父の経営しているボクシングジムで軽く汗を流すために入った俺は親父とスパーリング(親父は試合モードで本気を出してきやがった)をして、ボコボコにされたのだった。


リングから降りた後は動く気になれず、邪魔にならないように端っこね床に仰向けに寝て天井をボーッと見上げていた。


「猛、なかなか良い拳だったぞ!」


「龍兄サンキュー。親父には負け続けだけどね……。」


水を差し出してくれながらさっきのスパーリングを見ていて、俺を褒めてくれた男性は池 龍也(いけ たつや)さんだ。


俺とは2歳年上でボクシングのプロ選手だ。親父のジムに所属していて、昔から知っているし、俺を弟のように面倒を見てくれていたから、俺にとっても強くて優しい頼りになる兄貴だ。


「いやいや、あの人をよろめかせたなんて、スゲーよ!!猛も本気でプロを目指せばいいのになー。」


「でも、俺にはボクシングの才能がないからさ。自分自身を鍛えるだけで精一杯だよ。だって元プロの親父からダウンを取れないんだか、龍兄も含めた現役のプロ選手たちには絶対に勝てないよ。」


そう、俺は一度も親父からダウンを奪えた事がない。中学2年生くらいまでは努力をしていけばいつかは親父に届くと思っていたけど、ケロッとしている親父を見ているうちに、俺にはボクシングの才能が無いんだと思うようになった。


俺は龍兄から貰った水の入ったペットボトルに口をつけて飲んだ。


「……お前に才能が無いって言うなら、俺はどうなるんだっての……。」


「……えっ?今何か言った?ごめん、龍兄。周りが騒がしくて聞こえなかったから、もう一回言ってくれる?」


周りからはスパーリングの音や練習の声などで龍兄の言葉がかき消されたので、俺は龍兄に謝りながらもう一回言ってもらうようにお願いした。


「……別に大したことは言ってないから気にすんなって!!俺も練習に戻るから、猛はしっかり休んでけよー。」


「ああ、わかったよ。龍兄も頑張って!」


龍兄は笑顔で俺の頭をわしゃわしゃした後、立ち上がり、俺に背中を向けて手を振りながら去っていった。


俺が他の人のスパーリングの様子を眺めていると、制服を着て荷物を持った女子がジムに入ってきて、キョロキョロ見回して、俺を見つけて小走りで近づいてきた。


入ってきた女子はもちろん美玖だ。


「猛!大丈夫!?」


美玖が俺に抱きつきながら言った。


「大丈夫だって!!ただ、親父とスパーリングして、ボコボコにされただけだから!!……ていうか、俺がここにいるって、なんでわかったんだ?」


美玖にはボクシングジムに行くことを伝えていないのにどうして分かったのだろう?


「お義母さんから連絡があって、ジムで猛が倒れたって言われたの!だから、私心配になっちゃって……。」


「あのババア!!連絡するにしても、もっと詳しく伝えろや!!」


おかげで美玖には余計な心配させちまったし、金澤と濱谷にも悪いことをしちまったじゃねーか!!


あの2人には後でお詫びしないとなー……。


「この通り俺はピンピンしてるし、もう少し休んだら自分で歩いて帰れるから、心配しないで大丈夫だから。金澤達のとこに戻って……」


「それは、無理!!」


心配せずに金澤達と遊んできていいって言う前に美玖に遮られた。


「いや、でも……」


「でもじゃなーい!!杏奈と可奈にはちゃんと謝ってきたし、いつでも遊べるからいいの!!今から私が猛を看護するのー!!……猛が許可してくれなかったら、私は泣きます!!」



「……わ、わかりました!!ぜひ看護をお願いいたします!!ですので泣かないで頂けるとありがたいです!!」


美玖は俺を見つめながら叫ぶのだった。

美玖の涙は見たくないから、俺は折れるしかないんだよなぁ。


満足気に笑顔になった美玖は俺に仰向けで休むように言って、俺の頭を膝枕してくれた(強制)


その様子を遠くからカメラを構えて俺達を撮っている母を見つけた。……あのババアどうしてくれよう。

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