第34話 夏休み

「今日で学校が終わり夏休みになりますが、気を緩め過ぎないようにして下さい。これでHRを終わりにします。皆さん、楽しい夏休みを過ごして下さい。」


先生の言葉が締めくくられ、HRが終わった。

先生が教室から出ていったら、教室内がザワつき始めた。


「明日から夏休みだな!猛は有村さんとデートしまくるのか?」


輝弘が俺の机にやってきて話しかけてきた。


「まぁな。美玖とはまだ予定は立ててないけど、デートをする事は確定だな。輝弘は夏休み中部活ばっかりか?」


「予定をこれから決めるとか……これが彼女持ちの余裕か……。まぁ、部活もあるけど、夏休みは大事な大会もあるから、気が抜けないんだよな。」


輝弘は野球部だから、甲子園での大会もあるから大変だよな。輝弘は1年生ながら、投手として予選大会では対戦相手に1失点しながらも最後まで投げきって大活躍だったから、甲子園でもきっと活躍出来るだろう。


「甲子園は俺たちも精一杯応援するから、気負い過ぎずに頑張れよ!」


甲子園には学校全体で応援に行くことになっているから、輝弘の活躍を見れるはずだ。

ただ、周りの期待に応えようと気負いすぎるといつもの力が出せないのも知っているから、輝弘に気負い過ぎないように言った。


「……おう!憧れの場所だったから、張り切るなって言われても無理だろうけど、俺なりに楽しむぜ!……っと、そろそろ部活に行かないと!!じゃあな、猛!あんまり遊べないけど、夏休み以外でも遊ぼうぜ!」


「おう!怪我しないように練習頑張れよ!敦史は用事があって先に帰っちまったし、美玖は金澤達と女子会だって言って3人で遊びにいったから俺も帰るか。」


俺はカバンを持って席を立った。

俺はそのまま家に帰ってもやる事がなかったから、親父のボクシングジムで汗を流すことにした。

自分からボクシングジムに来るなんて、今までは無かった。親父に無理矢理連れて行かれたり、美玖の為に強くなりたいからって言い聞かせながら、通っていた時とは違って今は無性にボクシングをやりたかった。


目標に向かってひたむきに頑張る輝弘の姿に触発されたんだろう。だからこれは、きっと一過性の気持ちに過ぎないと思う。


「ひたむきに頑張る輝弘が眩しいから、俺も一回くらい本気で頑張ってみるかって思っただけだ。うん、きっとそうだ。」


俺は自分に言い聞かせながらボクシングジムに入った。俺が自分からボクシングで汗を流したいって伝えると、何故か親父は男泣きをして母さんも涙を流していた。


……いやいや、ただ汗を流しにきただけだから、それに親父に負けっぱなしなのも悔しいから、そろそろ勝ちたいって思っただけだからな!


絶対にプロにはならないし、なれねーから!!


……汗を流しにきて、軽くスパーリングをするはずだったのに、親父が本気でかかってきたため、ボコボコにされた。


でも、今回は親父にダメージを与える事ができたから、まぁ、良しとするか……。

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