第19話 同棲は突然に
水族館デートを楽しんでから数日後、ゴールデンウィークも残すところあと数日となったある日久しぶりに俺の両親が俺に用事があるらしく2人で帰ってきた。
美玖の両親も同じタイミングで帰ってきたようで、今は俺の家のリビングに集まって親同士が仲良く談笑していた。
「いやー、猛君はしっかりしているし、美玖を愛してくれているようで、良い息子さんですね。」
「いやいや、ウチの愚息はまだまだ強くなってもらわなければ美玖ちゃんを守れないですから、これからさらにビシビシ鍛えようと考えていたところですよ!」
……いや、アンタはいつも俺をボコボコにしてるだろ。元プロのアンタにこれ以上本気出されたら俺は気を失うどころか死んでしまうんだが?
美玖を守るために強くなりたいけど、ボコボコにされまくられるのはちょっとなー……。
「美玖ったら私達が家に久しぶりに帰ってからは猛君の事ばかり話すんですよ?オバサンの私にはもう甘すぎて耐えられなくって〜。」
「何言ってるんですかー。美香(みか)さんもまだまだお若いですよ!私達には美玖ちゃんとどんな風に過ごしているのか話してくれないから、心配でしたけど、その様子なら大丈夫そうですね。」
「……お母さん、恥ずかしいからもう話さないでよーー!!」
俺と一緒にリビングにある親達が座っているテーブルのイスではなく離れた場所に置いてあるソファーに寄り添うように座っている。
美玖が顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうに俺の胸に飛び込んできた。
俺は美玖を慰めるように頭を優しく撫でた。
「美玖が猛君に甘えられる姿を見られて安心したよ!いやー、ウチだと美玖はしっかり者だから、こうやって甘えられる旦那さんだとこちらも安心だな!!」
「猛がこんな風に女性を慰めてるのは初めて見たな!奥さんには優しくするのは大事な事だからな!!」
「あらあら美玖ったら猛君に甘えちゃって〜、いつからそんなに甘えん坊になったのかしら?」
「この2人ならこれからの同棲も上手く出来るわね。」
「「「間違いない!!あはは!!」」」
親同士で凄く盛り上がってるけど、止めに入ったらなんか言われそうだから何も言わないが正解だろう。
……これからの同棲?
俺は母さんの言葉に首を傾げた。美玖とは隣同士だから何かあってもすぐに駆けつけられるように合鍵も渡し合ってるし、言ってる意味がわからないんだが?
俺が美玖を見ると、美玖もキョトンとしていた。可愛い。
……おっと、美玖の可愛いさに見惚れてる場合じゃ無かった。
「おい、母さん。これからの同棲とはなんぞ?」
「そんなの決まってるじゃない。貴方達2人が一緒の家に住むのよ。」
「ええ!?」
母さんの言葉に美玖が驚いていた。俺もビックリだよ!!
「何で急にそんな話になった!?」
「急じゃないわよー。貴方達も後2年もすれば結婚するんだから、その前に同棲してれば夫婦としての仲も先に深められるでしょ?」
一緒に暮らしてみたら価値観が合わなかったから離婚したって話しもあるみたいだけど、年頃のカップルを同じ家で暮らさせるって親としてどうなのよ?
「で、でも!!私と猛はラブラブすぎるので万が一間違いが起きたらどうするんですか!?」
美玖の言葉に反応したのは美玖のお母さんだった。
「私達四人は早く孫の顔が見たいから、そうなったら嬉しいわよ?大丈夫!安心しなさい!とっても親切な婦人科を知ってるから!!」
「全然大丈夫じゃなーーい!!」
美玖が叫んだ。
「まあまあ、美玖落ち着きなさい。いいか?俺と母さんはいくら隣同士ですぐに駆けつけられるようにしてるとはいえ、心配なんだよ。猛君と一緒に暮らしてくれたら父さん達も安心なんだよ。美玖だって猛君と一緒に暮らしたいだろ?」
「ううっ……暮らしたいです。」
美玖が俺をチラ見しながら小さな声で言った。
「同棲の件はビックリしましたけど、俺も美玖と暮らしたいと思ってましたから嬉しいです。……どっちの家で暮らすんですか?」
美玖の家なのか俺の家なのかで準備する側が変わってくるから確認しないとな。
「2人の家なら向かいの空き地だった場所を買って建ててあるぞ?」
親父から返ってきた言葉は俺と美玖の予想を軽く超えてきたのだった。
「はっ?」
「えっ?」
「えええええ!?」
俺と美玖の叫びが家に響き渡るのだった。
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